研究課題/領域番号 |
18F18707
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 外国 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(実験)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 隆司 東京工業大学, 理学院, 教授 (50272456)
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研究分担者 |
COOK KAITLIN 東京工業大学, 理学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2019年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2019年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2018年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 中性子ハロー / ダイニュートロン / 不安定核 / 非束縛核 / 実験核物理 / Halo Nuclei / Dineutron |
研究実績の概要 |
2個の中性子は、自由空間では束縛せず、原子核内部においては長距離的な対相関を持つことが知られているが、原子核の表面では強い短距離的対相関「ダイニュートロン」が予測されている。しかし、ダイニュートロンの証拠は未だ不十分である。本研究では、1)非束縛核26Oの2中性子崩壊の観測実験、及び2)中性子過剰核19Bのクーロン分解反応の実験、の2つのアプローチでダイニュートロンを探索した。 1)26Oの2中性子崩壊観測実験では、非束縛核26Oをまず生成し、その崩壊過程で放出される2中性子の方向を精密測定することで角度相関を求め、ダイニュートロンを直接観測することを目指している。そのため、高精細中性子検出器HIMEの開発を行なった。ドイツ重イオン研究所との共同研究で、信号処理の集積回路化を進め、その導入に成功するとともに、宇宙線を用いたテスト実験を行い、十分な分解能が得られることが確認された。 2)中性子過剰核19Bのクーロン分解反応実験:19Bはホウ素同位体の中で最も中性子過剰な束縛原子核である。また、2中性子分離エネルギーが100keV程度と非常に小さいことから中性子ハロー核の候補であったが、実験はこれまでほとんどなく、ハローの証拠もまだ十分でなかった。本研究で19Bのクーロン分解反応を行い、電気双極子励起のスペクトルを得ることに成功した。ハロー核特有のソフト双極子励起が観測され、ハロー構造の証拠を得た。さらに3体理論模型との比較から、19Bにおいてダイニュートロンが存在することも示された。以上の成果は当該外国人研究員を筆頭著者として論文にまとめられ、Physical Review Letters誌にアクセプトされた。さらに、本論文は同学術誌のEditors' Suggestionにも選ばれるなど、高評価を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では1)非束縛核26Oの2中性子崩壊実験、2)中性子過剰核19Bのクーロン分解反応、の2つの研究を行なった。1)の研究では、高精細中性子検出器HIMEの開発を進め、ドイツ重イオン研究所(GSI)との共同研究で信号処理に集積回路を導入し、開発が完了した。あとは実験を待つのみである。2)中性子過剰核19Bのクーロン分解反応の実験については、分解後に放出される17Bと2中性子の運動量を求めることにより、不変質量から19Bの励起スペクトルを得ることに世界で初めて成功した。このスペクトルから、今まで確定していなかった19Bのハロー構造を明らかにした。さらに、京都大学の理論グループとの共同研究により3体模型による解析を進め、ハローを占める軌道の割合を決定するともに、ダイニュートロンが存在する証拠を得た。これらの結果をまとめた論文は、本外国人研究員を筆頭著者としてまとめられ、米国の国際学術誌Physical Review Letters誌にアクセプトされ、さらにEditors' Suggestionに選ばれた。 1)の研究については、実験が加速器施設側の都合によりまだ行われていないものの、基幹検出器である高精細中性子検出器の開発を完了したこと、また、2)の研究についてはわずか1年という期間で論文投稿まで実現し、有力国際学術誌への掲載がアクセプトされ、同学術誌の中でも特に優れた論文とされるEditors' Suggestionに選ばれたことから期待以上の成果であり、当初の計画以上に進展しているとした。 さらに、本研究員が米国ミシガン州立大学の助教授(テニュアトラック)に採用されたことも高い評価に値すると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究員は米国ミシガン州立大学の助教授に採用されたため、2年の予定が1年に短縮された。今後は研究員の行なってきた研究を引き継いで以下のように研究を推進する。 1)非束縛核26Oの2中性子崩壊の実験については、予定しているビームが加速されればいつでも実験できる状況にある。実験を行い、ダイニュートロンの直接観測を目指す。 2)19Bのクーロン分解反応実験については、すでにPhysical Review Lettersでの掲載が決まっており、高い評価を得た。今後はこの研究を引き継ぎ、他の2中性子ハロー核である6He,22Cのクーロン分解反応実験のデータ解析を進め、中性子ハロー核でダイニュートロンが普遍的な構造かどうかを調べ、その発現メカニズムを探っていく。
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