本研究では、重度知的障がいを伴う肢体不自由児を対象に、自己選択・決定を学ぶことができるワンタップ教材の開発と教育実践を行った。対象児は、筋疾患のために机上で事物を操作することがきわめて困難である。そのため、指先だけで操作ができるようにタブレット端末を用いた。 まず、対象児の習得状況に応じて課題を設定することができ、子ども自身がワンタップの操作で、自己選択・決定して正解か不正解かを判別できるワンタップ教材アプリ「どーれかな? 」を開発した。ワンタップ教材アプリ「どーれかな? 」の特徴は以下の3点である。①iPadで撮った写真を素材にして、課題にすることができること、②対象児の習得状況に応じて2択から6択問題まで、選択肢を変更することができること、③課題の流れは、正解すると「○」の表示とチャイム、不正解すると「×」の表示とブザー音が出る。不正解すると再度同じ課題に戻り、全問正解するとファンファーレや好きな動画が登場する設定ができること、が挙げられる。 次に、教育実践を行い、その教材の有用性を検討した。その結果、①教材の素材を対象児の興味関心があるものにしたため、対象児は初回から意欲的に集中して取り組むことができた。②正解のチャイムや全問正解のファンファーレが鳴り、褒められることで対象児が達成感を得て、さらに課題に取り組みたいという意欲につながった。③対象児の習得状況に応じて教材の内容をカスタマイズできるので、対象児の課題の範囲を広げることができた。 本研究の成果は、ワンタップ教材をアプリにしたことで、①運動制限のある子どもの学習意欲が向上したこと、②教員が子どもの実態に合わせたオリジナル教材を作成しやすくなったことである。
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