本研究の目的は、Field Programmable Gate Array(FPGA)を研究や実用でFPGAを取り入れるヒントとなる、技術体系を定着させる教材、カリキュラムの教材開発である。ここで物理学科の学部生の興味の対象となり得る、光の二重性を実験テーマとした。 実験の暗箱中の光学系は、微少な電流で駆動するLEDと単スリット、もしくはフィルターで光量を弱めたレーザー光を単光子源とし、ダブルスリットを通して干渉させた。この干渉縞を、MPPC 16ケを直線上に配置したアレイで受光した。MPPCからは、光子1ケについてピーク電流が数μA、時間幅が数十nsecで、最大数MHzの電流パルスが出力された。これを、オペアンプ(LM7171)によるI-Vアンプとコンパレータによって2価化し、標準ロジックICでパルスシェーピングしてから、FPGAボードに入力して16chを同時カウントした。ここで使用した回路は、学部3年次の物理学実験Iで教えている範囲で困難がないように設計した。ここまでの内容で、学部4年次の特別実験授業で実施ところ、興味を持って実験し、レポートをまとめていたので、興味を引くことのできるテーマであることは確からしい。 FPGAボードについては、National Instruments社のMyRIOを使用した。これは、Xilinx社のSoC(FPGA+ARM)であるZynqを搭載し、開発環境としてGUIベースのLabVIEW-FPGAが利用できる。また、通常のLabVIEWと同じインターフェースで、FPGA用のVIをもう1ケ追加するもので、LabVIEWを学習するのと同様である。FPGAの回路を設計してから、コンパイルし実行するまでに約5分と、他のHDLによる開発環境と比して、格段に高速で実験授業に取り上げやすい。 これらのセットアップで、ヤングの干渉実験を単光子モードで、16chのMPPCとFPGAによる同時測定で行うことで光の二重性を明確に示すことができ、FPGAの有用性が顕な使用法で、無理なくインプリメントした実験教材が完成した。 また、同時に、教育、学習の認知、発達科学的な研究も進め、具体から抽象への発達プロセスやチャンキングを考慮した効果の高い教育方法の仮説を構築した。
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