研究実績の概要 |
電気電子部品材料には, 導電性, 熱伝達特性, 耐食性が良いことが重要であり, 近年の電気電子部品の小型化・軽量化により, 強度や靭性の更なる改善が要求されている. 銅は導電性と熱伝導性に優れ, 耐食性も良好であることから古くから電気電子材料として使用されている. 従来, 銅の強度特性の改善の手段として, 他元素の添加とその後の熱処理による手法が挙げられるが, 他元素の添加は銅の優れた性質である導電性を著しく損なうことが問題となっている. その他の手段としては, 高温度域を除けば降伏強度は結晶粒寸法の減少と共に増加し, 結晶粒の微細化が強度特性を改善するのに有効であることから, 純銅の結晶粒を微細にすれば, 導電性を損なうことなく強度特性を改善できると考えられる. 材料に強変形を加えることを繰り返すことで組織を微細化する方法として, ECAP, ARB, MDFなどが挙げられるが, 本研究ではECAP法に着目した. ECAP法は, 金型内に交差する同じ径の溝孔を通して材料を押し出し, 交差部で材料にせん断変形を与えるもので, これを繰り返し行うことによりバルクの形状を維持したまま極めて大きな塑性ひずみを与えることができる加工法であり, 純銅の場合は300nm程度の微細粒が得られることが報告されている. 本研究では, ECAP法を施した微細粒銅(UFG)の高サイクル疲労試験を行い, 特に強変形(ECAP)を加えた回数の異なる(4パス, 8パス, 12パス)微細粒銅の疲労損傷とき裂の発生と進展挙動に注目して疲労強度特性を調査することを目的としている. 実験は, 既存の小野式回転曲げ疲労試験機を使用して実施した. 試験片は丸棒試験片を使用し, 試験片表面の疲労被害の観察とき裂長さの測定は, 所定の繰り返し数ごとに採取したレプリカに真空中で金を蒸着させたものを, 金属顕微鏡を用いて測定した. その結果, 8パス, 4パス, 12パスの順に疲労強度が増すことが明らかとなった.
|