鹿児島県に広く分布する「シラス」は堆積量が750億㎥と多く、鉱物組成もシリカとアルミナの非晶質粉体で構成されているため、工業製品の材料として最適である。しかし、現在シラスの使用用途や使用量は少なく、シラスの新たな活用方法が望まれている。 コンクリートの劣化現象の一つに酸による劣化がある。九州地方は、火山や温泉が多くその周辺では強酸である硫酸の影響でコンクリートが損傷を受ける事例がある。特に鹿児島県は、桜島や霧島連山を始めとする火山が多く存在しており、酸性劣化の対策が求められている。 そこで本研究は前述したシラスの新たな活用法を提案するために、シラスを混和材として利用した耐酸性の高いセメント硬化体を開発することを目的とした。以下に、その概要を説明する。 はじめに、シラスを分級し各粒度におけるシラスの鉱物組成や元素分析などの化学的性質を明らかにした。その結果、微粒部の鉱物組成は火山ガラスなどの非晶質で構成されており、粒径が大きくなるほどその混合割合が低くなる結果を得た。 次に、非晶質で構成されているシラスを用いて供試体を作製した。また、比較用としてOPCのみの供試体も作製した。作製した供試体は材齢28日まで水中養生を実施し、その後、霧島温泉地区にある温泉に浸漬し、定期的に質量、中性化深さ、圧縮強度を測定した。その結果、シラスを用いた供試体は、OPCのみの供試体と比較して、中性化深さや質量減少などの変化は同程度だった。しかし、圧縮強度を見てみるとOPCのみの供試体は浸漬直後から減少したが、シラスを用いた供試体の圧縮強度は増加し、強度の低下は確認できなかった。これは、温泉に浸漬することによりシラスの反応が促進し圧縮強度が増加したと推察される。 以上の結果より、シラスを混和材として利用することにより、温泉環境に強いセメント硬化体を作製できる可能性を示した。今後は長期的な耐久性について検討する必要がある。
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