研究実績の概要 |
(研究目的) 青色色素のインジゴが大気中のオゾンにより分解し脱色される反応を利用した光化学オキシダントの簡易な測定法を開発し, 中学・高校生による大気調査の実践に耐えうる新規な教材とすることを目的とした。 (研究方法) (1)低圧水銀ランプにより発生させたオゾンを含む模擬大気を, 自作のチャンバー内に充満させた。この模擬大気をポンプで吸引することでインジゴトリスルホン酸カリウムの水溶液に通じたあと, 溶液の吸光度を測定した。測定の結果, 同時測定した中性ヨウ化カリウム法から求めたオゾン濃度と比べ, 相関があった。これにより, インジゴを用いる方法は大気中のオゾン濃度測定に有効であることが確認できた。 (2)インジゴトリスルホン酸カリウム水溶液を浸み込ませたろ紙を乾燥させ, テフロンシートで挟むことでパッシブサンプラーを製作した。このパッシブサンプラーを野外に一定時間暴露することで, 大気中のオゾンと反応させた(パッシブ法)。暴露後のろ紙をサンプル管に入れ, 純水を加え, 振とうすることでインジゴを抽出し, この抽出液の吸光度を測定した。測定の結果を自治体が設置する大気環境常時監視システムによる光化学オキシダントの測定値を比較すると, 比例関係にあった。これにより, パッシブ法で大気中のオゾン濃度の測定が可能であることが分かった。 (研究成果) パッシブサンプラーによる大気中のオゾン測定は, ポンプで大気を吸引する必要がなく, 電源が不要で取扱いが簡単なため, 大気調査の実践教材として有効であった。開発する測定器具は生徒自らの手で製作することができるため, ものづくりの楽しさや測定の原理を知るきっかけを与えることになり, 観察・実験を通じた環境問題の状況を理解することに効果があった。
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