新生児の胸腺の発達に関わる可能性のある母乳中免疫成分を調査することは、アレルギー疾患の治療や出生時低体重児の発育に役立つと考えられる。しかし、これまでの研究では、マウスとヒトの母乳中IL-7およびTSLP含有量については詳細な調査が行われていない。そこで、本研究では、マウスとヒトの母乳中IL-7およびTSLPの含有量を分析するとともに、CCL25を含めた3種の含有量の相関も検討した。 その結果、ヒトでは、TSLPは常乳と比べて初乳で高い濃度を示した。IL-7は、初乳と常乳で含有量の変化がみられなかった。また、IL-7、TSLPおよびCCL25の含有量の相関を検討したところ、初乳では各含有量に相関関係はみられなかったが、常乳では、IL-7とTSLPで正の相関傾向が認められた。そのため、ヒトの常乳では、IL-7とTSLPが互いの母乳への産生に関係している可能性が考えられた。 他方、マウスでは、IL-7は検出されなかった。TSLPは、初乳と常乳で含有量の変化がみられなかった。また、CCL25とTSLPの含有量の相関を検討した結果、初乳中のCCL25とTSLPとの間に正の相関関係が認められた。そのため、マウスでは、初乳中のCCL25とTSLPがそれらの母乳中産生に影響しあっていることが推察された。 さらに、以上の結果をヒトとマウスで比較すると、ヒトでは、母乳中TSLP含有量は初乳から常乳へ移行後、その含有量が低下し、IL-7は常乳へ移行後も含有量が低下しないことが判明した。それに対し、マウスでは、IL-7は母乳中に存在せず、TSLPは、初乳から常乳への移行後も含有量が変化しないことが明らかとなった。このことから、母乳中の微量免疫成分は、動物種によって、その含有量や経時的な変化が異なることが示唆された。
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