本課題では、深海性サメ類であるラブカの胎仔を対象として、その長期飼育と展示を目指した。また、それらの活動は2016年4月に東海大学海洋科学博物館(以下、当館)とふくしま海洋科学館が中心となり発足し、現在も継続中である「ラブカ研究プロジェクト」の一環として行った。 研究サンプルとしてラブカ胎仔を得るためには、まずその成体を数多く入手することが必要不可欠となる。そのため、これまで以上に当館周辺の漁業者とのコミュニケーションを密にして、ラブカ成体の入網情報の収集に尽力した。その結果、駿河湾奥部で行われた桜えび中層曳網漁春漁(2018年3月~6月)において8個体(雄4、雌4)を入手することが出来た。これはプロジェクト発足以来、1漁期における最多の成体収集数となった。このうち雌3個体からは、大きな卵黄嚢を持つ胎仔、あるいは受精卵(卵殻内に胎仔を持つ)を複数個体得た。胎仔については、収集時の状態が良好とは判断出来なかったため、昨年の事例に続けたデータ収集を目的として海水中で飼育を行い、最長で68日間の飼育日数を記録した。また、同様に展示水槽における一般公開も行った。今回の飼育・展示では、個体収集時の状態を加味して自然海水における飼育試験のみとした。しかし、状態の良い胎仔を数多く得ることが出来れば、これまでの成果を基にして環境を変えた飼育試験が可能だと考えられる。一方、受精卵については、海水中における長期飼育が可能であることがプロジェクトの飼育試験でわかっている。そのため、同様に飼育を行った結果、再び長期飼育に成功し、2019年3月31日現在、飼育338日を越えた個体を継続飼育している。 以上の成果は、今後の水族館におけるラブカ飼育・展示の発展に貢献できるものであり、今後も継続的な活動によってさらに多くの成果が期待できる。
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