研究課題
奨励研究
【研究目的】腎移植領域における免疫抑制剤エベロリムスの血中濃度と臨床効果、副作用との関係、さらにPI3K-AKT-mTORカスケードの各遺伝子多型や、エベロリムスの体内動態に関与する遺伝子多型と治療効果との関係を明らかにし、エベロリムス個別化治療法を確立する。また、mTORにはrs2295080T>Gおよびrs2536T>C遺伝子多型が存在し、変異型では野生型に比べ転写活性減少が報告されている。rs2295080T>G多型は、がんの予後因子となりT/T多型で予後不良とされているが、腎移植でmTOR遺伝子多型のエベロリムス効果に及ぼす影響は知られていない。今回、腎移植でエベロリムスの投与量や体内曝露量に及ぼすmTOR遺伝子多型の影響を検討した。【研究方法】倫理委員会の承認を得、同意を得たタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル併用レジメン腎移植患者50名を対象にした。CYP3A5遺伝子多型で層別化を行い、mTORrs2295080T>G、rs2536T>Cの各多型における投与量で補正した曝露量(AUC_<0-12>/D)を比較した。エベロリムス投与量の増減・中止の時期について1年間調査し多型間で比較した。【結果】CYP3A5*1アレル保有群においてエベロリムスのAUC_<0-12>/Dは、rs2295080T/T多型群、Gアレル保有群でそれぞれ60.1と67.5ng・h/mL/mg、rs2536T/T多型群、Cアレル保有群でそれぞれ60.1と75.3ng・h/mL/mgであり、各群間で有意差はなかった。CYP3A5*3/*3群においても同様にmTOR各遺伝子多型の影響は観察されず、それぞれ69.1と59.0ng・h/mL/mg、67.4と54.8ng・h/mL/mgであった。一方、エベロリムス投与1年間で減量・中止症例は29/50例(58.0%)であり、その中央値は7.5ヵ月、増量症例は9/50(18.0%)で、その中央値は2.5ヵ月であった。投与量の増減・中止に対し、生存時間解析を行ったが、mTOR多型間で差はなかった。mTOR遺伝子多型によってエベロリムス維持投与量の増減が予想されたが、移植後1年以内で投与量や体内曝露量に影響は観察されなかった。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Int J Mol Sci
巻: 19 号: 3 ページ: 882-882
10.3390/ijms19030882
120007172094