研究課題
奨励研究
研究目的 : バンコマイシン(VCM)は抗MRSA薬として臨床上重要な役割を担うが、侵襲性の高い手術後は分布容積や腎機能などが不安定になり、このような全身状態の不良な患者ではVCMによるAKIの発症リスクが高くなることが知られている。AKIの発症は腎機能低下を伴うだけでなく、その回復のために加療を要し、薬物体内動態の変動による有害反応の発現も惹起し得る。そのため、VCM投与中には血清クレアチニンや尿量により腎機能をモニタリングすることが重要となる。しかし、血清クレアチニンや尿量そのものが腎排泄機能のアウトプットであるため、これらの値が変化した際にはすでに腎機能が低下したことを示しており、現状ではAKIの早期検出は困難とされる。前臨床試験において、分泌タンパク質であるNeutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin(NGAL)はAKIを検出する尿中バイオマーカーとしての有用性が報告されている。そこで本研究では、NGALに注目した検討を行なった。研究方法 : 京都大学医学部附属病院において心臓血管外科に入院し、開心手術・大血管手術を受け、VCMが開始される患者を対象として、VCM投与後におけるAKIの実態を調査した。また、NGALがVCMによるAKI検出のためのバイオマーカーとなるかどうかを検証する臨床研究のプロトコル、および、尿中におけるNGAL測定方法の整備を行なった。研究結果 : 手術後にVCMが投与された患者のうち約20%においてVCMに関連したAKIが発現することを明らかにした。また、実態調査から明らかになったAKIの発現タイミングをもとに、NGALの有用性を評価するためのプロトコルを整備した。さらに、尿サンプルを用いてNGAL濃を評価する測定系を標準化することに成功した。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Eur J Clin Pharmacol
巻: 75 号: 4 ページ: 561-568
10.1007/s00228-018-2592-4