抗悪性腫瘍剤抗血管内皮増殖因子(VEGF)ヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブは結腸・直腸癌、非小細胞肺癌、卵巣癌など様々な癌治療に使用されている。ベバシズマブの副作用として高血圧が知られており、コントロール不能の高血圧は死亡につながる可能性がある。近年、VEGF阻害薬投与において高血圧発症が治療効果の予測因子となることが示唆されているが、日本人において血圧と治療効果について検討された報告は少ない。そこで本研究では血圧変動とベバシズマブの有効性の関連及びその変動要因を解明することを目的とした。 浜松医科大学医学部附属病院において、2017年1月~12月の間にベバシズマブを投与された患者を臨床研究データベースシステムD star Dを用いて抽出し、各患者の血圧変動を調査した。またMann Whitney testを用いて解析を行った。抽出したベバシズマブ投与患者91名、ベバシズマブ投与回数647回であった。ベバシズマブ投与患者の血圧変動を調査し、投与前と比較し≧20mmHgの上昇、又は収縮期血圧140以上又は拡張期血圧90mmHg以上となった患者を高血圧発症群とした。高血圧発症率は70.3%と高値を示した。さらに高血圧発症群のベバシズマブ投与中平均血圧は133.0/78.6mmHgであるのに対し、非発症群の投与中平均血圧は114.9/71.5mmHgと有意に低かった。また各群のベバシズマブ初回投与前の平均血圧は高血圧発症群123.5/72.8、非発症群116.0/67.7mmHgと差が認められた。高血圧発症群と非発症群の体重当たりの投与量を比較したところ、それぞれ9.9mg/kg、11.0mg/kgであった。ベバシズマブによる高血圧の発症リスクは高く、初回投与前の血圧が高血圧発症に関連する可能性が示唆された。今後、治療効果も含めた変動要因についての調査を行っていく予定である。
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