研究課題
奨励研究
分子標的抗がん薬ソラフェニブは、2009年に切除不能な進行肝細胞がんに承認されて以来、唯一の1次治療として使用できる薬剤であった。しかし、2017年6月に、本邦では、化学療法で治療抵抗性となった肝細胞がんに対して、レゴラフェニブが承認された。これら2剤は有効性を認めるものの、重篤な副作用のために、治療に難渋する事例が多いという臨床的問題がある。本課題では、肝細胞がんでのソラフェニブ・レゴラフェニブ遂次療法のTDMに基づく最適な投与方法の確立を目指し、PK/PD解析を実施した。現在、血中濃度の測定は順調に集積されている。内訳は、ソラフェニブ26名(281ポイント)、レゴラフェニブ1名(1ポイント)となっている。そこで、ソラフェニブ濃度と奏効率・副作用との関連性を解析した。滋賀医大病院でソラフェニブが投与され、本研究参加の同意を得た肝細胞がん患者26名を対象として、ソラフェニブのトラフ濃度を測定した。投与開始3ヵ月の中央値の濃度と効果の関連性を、副作用発現時の濃度と副作用の重篤度の関連性を解析した。患者背景は、男性22名、女性4名であった。平均年齢は73.3歳であった。ソラフェニブ濃度が4μg/mL以上の患者では、grade 2以上の下痢および疲労の発現頻度が高かった。また、ソラフェニブ濃度が4μg/mL以上の患者では、4μg/mL以下の患者と比較して、治療中止が多く、有意に予後が不良であった。本結果より、ソラフェニブの血中濃度モニタリングは、毒性の回避に有効である可能性が示唆され、特に4μg/mL以上では治療の継続は困難であり、予後にも影響を及ぼすことが示された。現在、肝がんのレゴラフェニブにおいても、同様の解析を実施する予定であり、大腸がんのレゴラフェニブ(40名)とのがん種での薬物動態の差異も検討する予定にしている。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
Leukemia & Lymphoma
巻: 60 号: 12 ページ: 2975-2981
10.1080/10428194.2019.1608531
Clin. Genitourin. Cancer
巻: 17 号: 2
BMC Cancer
巻: 18 号: 1 ページ: 957-957
10.1186/s12885-018-4862-z