研究課題
奨励研究
エトポシドは主に腎臓と胆汁から排泄され、胆汁排泄にはUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)1A1の関与が明らかとなっている。エトポシドはUGT1A1の基質であるにも関わらず、遺伝子多型によるエトポシドの体内動態ならびに副作用への影響については不明なままである。エトポシドと同様にUGT1A1によって代謝されるイリノテカンでは、UGT1A1遺伝子多型と体内動態ならびに副作用の重篤度との関連が指摘され、実臨床においてはイリノテカンの投与前にUGT1A1遺伝子検査を行い、副作用の予測および予防が行われている。本研究は、イリノテカンと同様にエトポシドにおいてもUGT1A1遺伝子多型が副作用の重篤化予測に応用可能であることを検証することを目的として、エトポシドを投与される患者のUGT1A1遺伝子多型と、エトポシドの体内動態ならびに副作用発現頻度および重篤度との関連について検討した。先行研究として、UGT1A1遺伝子多型*28、*6ホモ接合体または複合ヘテロ接合体を有した患者(ホモ群)とエトポシドによる重篤な副作用の発現との関連を後方視的に調査した。その結果、小細胞肺がん患者に対するエトポシドとカルボプラチンまたはシスプラチン併用療法において、ホモ群(8名)では88%に好中球減少Grade4が発現したのに対し、*28、*6ヘテロ接合体または野生型の患者(非ホモ群47名)は43%であった。さらに、多変量解析においてホモ群は好中球減少Grade4の独立したリスク因子であった[オッズ比11.3 ; P=0.04]。次に、エトポシド血中濃度が、高速液体クロマトグラフィーを用いて既報と同等な条件で十分測定可能であることを確認した。検討の結果、内標準物質はテニポシドを、血清からのエトポシドの抽出法はt-ブチルメチルエーテルを用いた液液抽出を選択した。今後、倫理審査委員会の承認を得て、症例を集積していく予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Int J Clin Oncol
巻: 24 号: 3 ページ: 256-261
10.1007/s10147-018-1358-4