好中球は生体に侵入してきた細菌などの異物をその貪食能によって排除することが良く知られている。近年、このような生体防御機能に加え、他の細胞群との相互作用により多様な生命現象に関与することが判明しつつある。しかし、この細胞の性差における機能差や妊娠時における役割については殆ど明らかになっていない。 生体内におけるこの細胞の機能検討のために、これまで選択的好中球枯渇化抗体(RP-3)を用いた多くの研究がある。この抗体はラットにおいては腹腔内投与により、好中球を枯渇化できるが、その作用機序は未だに不明な点が多い。 予備実験において、妊娠時の好中球の機能解析のために、この抗体を用いて枯渇化実験を試みたところ、予想に反し妊娠ラットにおいてはこの抗体の好中球枯渇化能は著しく変動する事を見いだした。本研究では、上記の事実に基づき、妊娠末期、特に分娩期における好中球の機能を明らかにすることを最終目標にしている。 これまでRP-3対応抗原の局在は判明していない。本研究においては、まずこの抗原分子の血球系細胞においての発現分布を明らかにすることを目的とした。これらの細胞におけるRP-3対応抗原の発現を検討するため、非妊娠♀ラットの末梢血好中球分画を好中球マーカー(CD11b、およびRP-1)で染色し、フローサイトメーターにより解析した。その結果、未固定のほぼ全てのCD11b陽性細胞はRP-3陽性であった。RP-1抗体は好中球活性化マーカーで、通常は膜表面には検出されない。このマーカーについては膜透過処理したところ、こちらもほぼ全てのRP-1陽性細胞においてRP-3陽性であった。 今後は更に各血球系細胞の特異的マーカーを用い、RP-3対応抗原の発現細胞、および部位を明らかにする予定である。
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