研究課題
奨励研究
心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす直接的な原因である血栓形成に変性リポ蛋白質がどのように関与するかは不明である。血栓形成メカニズムのうち血小板凝集能の測定は、体内での状態とは異なった条件での測定を通常行う。すなわち、血小板の凝集と血液凝固が並行して起こるため、血小板凝集だけを評価するために、血漿を除去して血小板だけを分離するか、血液凝固が起きないようにカルシウムキレート剤を用いた上で、血小板凝集を測定している。これはかなり人工的な条件であるうえに、Ca2+のキレートはさまざまな反応に影響を与える可能性がある。そこで本研究では、変性LDLの血小板凝集におよぼす影響を本来の血液の状態に近い条件で解析することとした。実際には、多血小板血漿を調製し、その際、抗凝固薬として、Ca2+のキレート剤の代わりにトロンビン阻害薬を使用し、血液凝固を抑制するのにトロンビン活性のみを抑制した状態での血小板凝集能測定を試みた。しかし、LDLあるいは変性(酸化)LDLを添加した場合としない場合で凝集のパターンを比較したところ、両者で明確な違いは認められなかった。最近の動物実験による報告で、通常食での飼育時と高脂肪食負荷時で、血栓形成に違いがみられ、これが変性LDL受容体に依存しているとの報告があり、生体内ではやはり変性LDLが何らかの影響を血小板に及ぼしている可能性があるが、少なくとも採血後分離した多血小板血漿に急性に変性LDLやLDLの投与を行い、本研究の条件で検討する限りでは、これらの明確な影響は検出できなかった。個体レベルでの実験報告を考えると、変性LDLおよびLDLは、より長期間で、多種の細胞・組織の関与により血小板機能に影響を及ぼしている可能性が考えられた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
巻: 26 号: 11 ページ: 947-958
10.5551/jat.47183
130007740412