研究課題
奨励研究
【背景と目的】閉経は内臓脂肪増加、耐糖能低下の危険因子である。近年腸内細菌が、食物の消化活動のみならず、様々な疾患の原因となることが明らかとされてきた。腸内細菌叢におけるフィルミクテス門比率の増加は、脂肪吸収効率を増加させる。しかし閉経と腸内細菌の関係は明らかでない。動物モデルにより、アントシアニジンは閉経後体重増加を予防することが報告されているが、そのメカニズムは明らかでない。【研究方法】閉経と腸内細菌叢の関連に着目し、マウス卵巣摘出モデルを用いて、エストロゲン欠乏が腸内細菌叢に及ぼす影響を、腸内細菌の16S rRNA遺伝子によるリアルタイムPCR法によって解析した。卵巣摘出マウスにアントシアニジン混餌、あるいは通常餌投与し、体重測定、耐糖能試験を行い比較した。【結果】卵巣摘出マウスでは、いわゆる「デブ菌」のフィルミクテス門が増加すること、それはアントシアニジン投与により是正されることを見出した(J Food Sci. 2018)。また、卵巣摘出マウスは肥満となり、耐糖能が低下するが、アントシアニジンを投与することにより、閉経後マウスの脂肪量が減少し、耐糖能が改善することを示した(J med dent sci. 2018)。以上、我々は、閉経モデルマウスでは腸内細菌を介して脂肪代謝、糖代謝が制御されていることを明らかにした。本研究の成果は2018年6月に東北大学、東京医科歯科大学の共同プレスリリースにて報道された。この知見をヒトに応用することにより、プレバイオティクス、プロバイオティクスによって閉経に伴う肥満、耐糖能悪化をコントロールすることができるようになる。国民医療費が40兆円を超える現在において、本研究の成功は、医療経済的視野から見ても、有意義である。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Journal of Medical and Dental Sciences
巻: 65 号: 2 ページ: 45-50
10.11480/jmds.650201
130007410283
J Food Sci
巻: 印刷中 号: 4 ページ: 661-666
10.1111/1750-3841.14098
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2018/06/press-20189999-proanthocyanidins.html