【研究目的】 本研究では左半側空間無視に対する効率的なリハビリテーション手段を確立するため、左半側空間無視患者の注視点を評価して「左空間を注視しないことにより無視するタイプ」と「左空間を注視するにもかかわらず無視するタイプ」へ分類することを目的とした。 【研究方法】 当院入院患者で初発の脳損傷により左半側空間無視を呈した患者のうち、指示理解が可能で本研究に同意を得られた患者を対象とした。左半側空間無視の有無についてはBehavioural Inattention Test通常検査で評価し、左空間注視の有無についてはBirmingham Object Recognition BatteryのObject Decisionの正当数および視認中の注視点をアイマークレコーダ(SensoMotoric Instruments社製、Eye Tracking Glasses 2.0)で記録した解析結果で評価を行った。その他の神経心理学的検査としてMMSE、BIT通常検査、Baking Tray Task、Catherine Bergego Scaleを実施した。 【研究成果】 左空間を注視しているにもかかわらずObject Decisionのキメラを認識できない患者は20名中9名であり、脳損傷部位は視床出血と中大脳動脈梗塞であった。左空間を注視するにもかかわらず無視する9名とそれ以外の11名における2群間比較にて、MMSE、BIT通常検査の模写試験および描画試験に有意差を認めた。本研究の成果により「左空間を注視するにもかかわらず無視する」という半側空間無視の新たな症状の存在が明らかとなった。
|