研究実績の概要 |
近年, メディア機器等の普及により, 成長期の子どもの視力への悪影響が懸念されている。そこで, 視力低下と生活習慣, 特に睡眠の質に着目して視力低下との関連性について明らかにすることを研究の目的とした。 研究方法としては, 小学4年生と中学1年生を対象として, 質問紙による生活習慣調査を行った。分析方法としては, 対象者の基本属性(性別, 両親の眼鏡の使用の有無)についてχ^2検定を行った。視力不良と関連が認められた項目については, 独立変数, 視力群別を従属変数として二項ロジスティック回帰分析を行った。また, ウェラブルデバイスウォッチを活用して, 小学4年生と中学生1年生の睡眠の実態を把握し, 睡眠の質と視力の関連について検証を試みた。 生活習慣調査と睡眠の質の調査結果から考察したこととして, 小学生・中学生ともに視力と生活習慣(睡眠の質)による因果関係において大差は認められなかった。しかし, 運動時間は視力低下群(視力検査で1.0以下の視力者)の子どもにおいて長く, これまでの研究の定説(運動時間が短い方が視力低下が進むであろう)と異なっていた。また, 睡眠と視力の関連性は, 睡眠中の中途覚醒の状態が, 視力の良い群(視力検査で1.0以上の視力者)で有意に短いことが明らかになった。睡眠時間や深い眠りの平均時間は, 視力の良い群の者の方が長いという結果であった。しかし, 今回の調査対象者が小学生・中学生ともに約60名ずつと調査対象者が少ないため, 有意差が認められなかったと考えられる。 本研究を遂行するにあたって, 小児の睡眠に関する研究や文献がほぼ皆無で有るため, 児童・生徒の睡眠の質をアセスメントするための基準不足が否めなかった。今後, 視力維持の保健指導を充実させることを含め, 小児期の睡眠について詳細な実態調査と検討が重要と考える。
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