研究課題/領域番号 |
18H00697
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長縄 宣博 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (30451389)
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研究分担者 |
佐原 哲也 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (70254125)
山根 聡 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (80283836)
草野 大希 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (90455999)
ガンバ ガナ 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (90624825)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2020年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2019年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2018年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 20世紀 / 暴力 / 民主主義 / 帝国 / ユーラシア / イスラーム / ナショナリズム / 社会主義 / 市民社会 |
研究実績の概要 |
初年度は、研究代表者・分担者が7月と2月の定例の研究会でこれまでの研究と今取り組んでいる課題について報告をして相互の理解を深め、トランスナショナルヒストリーとして20世紀を描く教科書の章立てを構想した。その結果、1)帝国秩序への抵抗(1870年代から1920年代初頭)、2)反帝国主義の時代の国民形成(戦間期から冷戦期へ)、3)拡散する戦闘的イスラーム主義者(1979年以降)という軸を設定することが確認された。 資料調査と成果発表も概ねこの三つの軸に沿って行われた。長縄は、ロシアのモスクワとオレンブルグで革命・内戦期の赤軍におけるムスリム部隊の編成について史料調査を行い、とりわけタタール人の露土戦争、日露戦争、第一次世界大戦の経験が赤軍内にいかに持ち込まれたのかについて、兵士の手記などを読み解く報告を北米のスラブ・ユーラシア学会で行った(上記1)の軸に相当)。山根は、パキスタンのラーホールにあるジャマーアテ・イスラーミー(イスラーム党)本部の図書館にて、党創設者で現代イスラーム復興運動の代表的な思想家とされるアブル・アアラー・マウドゥーディー(1903-79)の著作について、世界の諸言語に翻訳された書籍を調査した(上記2)の軸に相当)。佐原は、2014年に端を発する中東とEUとの危機の連動を難民とそれを取り巻く社会から考察すべく、トルコ、マケドニア、ギリシャ、セルビア、ブルガリアで調査を行った(上記3)の軸に相当)。草野は、日本国際政治学会2018年度研究大会で、第一次世界大戦期の米国による対中南米軍事介入について報告し(上記1)の軸に相当)、『中東研究』誌に現在の中東における米国の政策に関する論文を発表した(上記3)の軸に相当)。これらの資料調査と成果発表によって、「長い20世紀」の民主主義と暴力との関係を考察する準備が整えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
将来の教科書の三つの軸のうち1)帝国秩序への抵抗については、次年度に各自の章の構想をすり合わせられる見込みである。なお長縄と山根は2018年度に、世界史の転換点として1905年の意味を考える山川出版社の論集でそれぞれ章を担当できた。また、3)拡散する戦闘的イスラーム主義者については、イラン・イスラーム革命とソ連のアフガニスタン侵攻のあった1979年を冷戦構造の転換点として位置付けることで合意できた。以降は、各自が2)の軸(反帝国主義の時代の国民形成)との接合に努めることが必要である。 以上のような課題を共有しながら、初年度は研究代表者・分担者が各自の研究環境を整えた。長縄は本研究を国際的な研究者ネットワークに接合すべく、モスクワの高等経済学院のロシア史研究グループとサンクトペテルブルグ・ヨーロッパ大学の革命・内戦研究グループというそれぞれがすでに国際的な共同研究を遂行している集団との協力を開始した。山根は、イスラーム党本部の図書館で未整理なまま保管されているマウドゥーディーの著作の翻訳について、出版社、出版地、出版時期など全般的な傾向を把握する調査を行った。それによって、20世紀においてイスラーム復興思想がエジプトやイランの潮流とウルドゥー語圏との相互作用を経て拡散していく動態を把握することを目指すことになった。佐原は、トルコでネヴシェヒル周辺のアフガン難民、ギリシャでレスボス島のシリア難民、セルビアでベオグラードの難民一次受け入れ施設のイラク難民に出国時の情況などをインタヴューし、マケドニアとブルガリアで2016年の欧州難民危機に際しての一般市民の反応に関してジャーナリストらに聞き取り調査を行った。草野は、帝国主義全般、アメリカ帝国主義(覇権主義)、アメリカの介入政策、アメリカの自由民主主義拡大に基づくリベラル国際秩序に関連する研究書などを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、各年度の重点課題の下で、それと関連付ける形で各自が担当する研究を遂行し、年二回の定例の研究会や各自の学会で成果を発表することにしている。そうすることで、教科書の一貫性が高まることも期待できる。2019年度は、帝政期から戦間期への移行を共通の重点課題とする。定例の研究会(7月と2月に予定)では、教科書の章となる原稿の議論を始める。そのために、各自が国内外で資料調査を行う。また研究会には、本研究でカバーできない地域(アフリカや東南アジア)について、国内の専門家を招聘する。残念ながら、ガンバガナは2019年度から中国の大学に移籍するので、年二回の定例の研究会を利用して代理を探すことにもなる。さらに、モスクワの高等経済学院のロシア史研究グループと共同研究を始めることになったため、早速12月に共催でロシア帝国の統治に関する国際シンポジウムをスラブ・ユーラシア研究センターで行う計画が進行している。それ以外に、各人が南アジア学会、国際政治学会、北米のスラブ・ユーラシア学会(ASEEES)などで研究報告を行う。 2020年度は戦間期に重点を置きながらも冷戦期との連続性を視野に入れた研究を行う。2021年度は冷戦期に焦点を合わせ、東西の体制を越えた比較と連関の網を設定し、冷戦期の暴力からいかなる秩序が生成されたのかを具体的な地域の文脈で考察する。2022年度は、1979年から現在に至るイスラーム聖戦士の流動を捉え、ジハードがイスラームに内在的な問題ではなく、地球規模でのイデオロギーと暴力の複雑な連関の一角であることを明確にすることを共通の課題とする。最終年度には札幌で総括の国際シンポジウムを行う。
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