研究課題
基盤研究(B)
大規模な相互協力を達成可能なのは人類のみである。しかし、人間のいかなる本質がそれに寄与しているのかは、人文学から生物学までの幅広い領域において多数の研究がなされてきたにもかかわらず、未だ明らかではない。本研究は、現在有力な理論仮説の一つであるとされている強い互恵性に焦点を当て、その妥当性を検討した。この仮説は、協力行動、罰行動、偏狭さ、そして外集団攻撃行動との間には極めて強い連動が存在すると主張する。本研究では、これらの行動間の関連を実験室及びオンライン実験により検討し、協力行動はそれ以外の三種類の行動のどれとも強い関連がないことを明らかにした。これは、強い互恵性仮説に対する反証となる。
強い互恵性仮説によれば、他者に協力し、非協力者に罰を与え、かつ外集団を攻撃するのが人間の本質であるということになる。もしこれが真実だとすれば、社会科学全般において非常に大きな意味を持つことは言を俟たない。人間の本質的利他性と戦争は不可分であるということを意味するからである。このことは、戦争の正当化につながるばかりでなく、戦争のない世界の実現は極めて困難であることを含意する。従って、本研究は人間の本質に迫るという意味で自然科学及び人文学における最重要課題を扱うと同時に、社会科学全般においても、今まさに必要とされる研究と言える。
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