研究課題
基盤研究(B)
低分子・高分子に次ぐ生体機能分子として、中分子(分子量500~2000程度)が注目されている。有機合成手法や生合成遺伝子操作技術の進歩に伴って、新規構造を有する中分子の大量取得も可能になりつつあり、医薬・農薬を指向した中分子研究は今後さらに盛んになると予想される。しかし、新規分子の取得に伴う構造決定は依然として、研究のボトルネックとなりうる段階である。そこで本研究ではVCD(赤外円二色性)分光法を用いて、中分子にも適用可能な簡便かつ信頼性の高い構造分析法の開発に成功した。また本研究の過程において、片方のみの軸不斉を有するカルボジイミドという特殊な分子の創製にも成功した。
本研究ではこれまで構造分析が困難だった中分子や、脂質のような柔軟分子、糖のような高極性分子などを簡便に構造決定する新たな方法論を提供した。本研究成果は、中分子を始めとする各種分子の構造決定というボトルネックを解消し、それらの研究が出口とする医薬・農薬創製に資すると期待される。さらに、1932年に提唱されてから86年間入手されてこなかった「片方のみの軸不斉を有するカルボジイミド」の合成に成功した。カルボジイミドは工業的に世界で最も汎用される分子であり、その基本的な性質を解明は今後の化学工業への波及効果が期待される。
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