研究課題
基盤研究(B)
本研究では、流域から海洋沿岸域における生態系の構造を、放射性炭素(Δ14C)やアミノ酸の窒素同位体比(δ15N)を用いて明らかにすることを目的とした。まず一年目に研究の方法論を確立させた。二年目には、河川を流れる溶存態有機物が、滞留時間の異なる有機炭素が混合したものであることを明らかにした。そして三年目に、炭素循環の指標としてΔ14Cの有効性を議論した。さらに、アミノ酸のδ15Nを用いて、異なる海流がもたらす餌資源の混合が、多様な魚類物群集を形成していることを明らかにした。また、海洋の動物プランクトンの群集平均栄養段階(iTP)が生物多様性と負の相関を示すことを明らかにした。
海洋沿岸域は漁業資源、レクリエーションといったサービスをもたらすため、人類にとって最も身近な生態系の1つであると同時に、人為的な環境破壊の影響を受けやすい。本研究によって、生態系解析における放射性炭素とアミノ酸の窒素同位体比の有効性が示された。この方法論は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」や、ユネスコの「持続可能な開発のための国連海洋科学10年」を進める上で、さまざまな科学的知見を得るための重要な基盤技術になるものと期待される。
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