研究課題
基盤研究(B)
骨髄脂質メディエーターの解析において、交感神経シグナルを受けた骨髄未分化好中球において、脂質メディエーターをリガンドとする受容体型転写因子PPARδの発現が増強し、食餌により骨髄に供給される脂質のうち特にω3脂肪酸がこの受容体に作用することで骨髄血管透過性が制御されていることを発見した。また、交感神経シグナルは骨髄を低酸素状態にし、この刺激で赤芽球からFGF23が産生され、これが未分化造血細胞のケモカイン受容体の機能を抑制することで血球の位置どりを制御している構図も明らかにした。
骨髄移植は難治性造血器疾患に対して治癒を望める非常に重要な治療法です。近年では、サイトカインG-CSFを健常人に投与することで、本来ほぼ骨髄にしか存在しない造血幹細胞を末梢血に動員してこれを集め、骨髄の代わりに移植する末梢血幹細胞移植が主流となりました。しかし、G-CSFによる動員はその効果発現メカニズムの理解が不十分であり、また10-20%程度の予知できない動員不全のケースがあり、臨床的に問題です。本研究成果は、動員を起こさせるのに必須の骨髄内因子を発見するとともに、食餌中の特定の脂質が動員不全の鍵として働いていることを明らかにしています。臨床現場の問題解決につながる成果です。
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Blood
巻: 137 号: 11 ページ: 1457-1467
10.1182/blood.2020007172
120007002610