研究課題
基盤研究(B)
民族スポーツは、永らくこれを伝承する当該地に閉じられた関心事として営まれてきたが、とりわけユネスコが2003年に人類無形文化遺産制度を発足させて以来、観光文化資源の観点から注目されるようになった。観光文化資源としての民族スポーツは観覧に供するパフォーマンスとその背景文化から構成されるが、これまで背景文化は当該地に共有される情報(これをエティック情報という)が利用されるのが常であった。本研究は、これを新たに研究者の学術的分析解釈に基づくイーミック情報によって補完し、当該民族スポーツの観光文化資源としての価値を高めることを目的とし、具体的事例を提示した。
民族スポーツはこれまで文化人類学やスポーツ人類学の分野で研究が進められてきたが、起源・伝播・変容といった通時的関心、また象徴論・機能論・アイデンティティー論といった共時的関心から接近するのが常であった。民族スポーツを観光文化資源とみて、その有用性を論じる本研究は、この点において先行研究を見ず、高いオリジナリティーを持つ。本研究は、当該地に共有されるイーミック情報を、研究者のアカデミックな分析・解釈から導き出された新しいエティック情報によって補完し、民族スポーツの観光文化資源性を高めることを目指したもので、研究の社会還元の試みと言えよう。