研究課題/領域番号 |
18H03444
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 守恵 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 准教授 (10402752)
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研究分担者 |
大山 修一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (00322347)
重田 眞義 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (80215962)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2019年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2018年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 廃棄物 / アフリカ / マテリアリティ / 用不用 / ゴミ / 都市と農村 / エチオピア / ニジェール / 循環 / 在来と外来 / 消費財 / 耐久財 / 在来耐久財 / 外来耐久財 |
研究実績の概要 |
研究の目的は、現代アフリカに暮らす人びとが日常生活で用いるモノが不用になる過程を人とモノの多層的な関係の様態(=マテリアリティ)と位置づけ、市場経済や近代学校教育の浸透、砂漠化など自然環境の変化にともなってゴミのマテリアリティが変成するメカニズムを解明することである。四年度目は、新型コロナウィルスの影響を考慮して、研究成果発信準備とインターネット会議システムなどを活用した学術交流を中心に研究活動を進めた。 本研究プロジェクトメンバーと、在来・外来および耐久性を基準に分類したモノの4類型がゴミになる過程とその物質的な循環の特質について成果を共有した。四年度目は、在来のモノ(農産物)を使い捨てるモノとして循環させていく人びとの在来の知識や慣習的な行為に注目して、ものの循環とマテリアリティについての検討を進めた。 これをふまえて、2022年3月10日にものの循環とマテリアリティにかかわる国際ワークショップをオンラインで開催した。ワークショップでは、ライデン大学アフリカセンター(オランダ)よりオモ系言語の専門家であるAzeb Amha博士をゲスト講演者として招聘した。Azeb博士は、エチオピア、オモ系言語を母語とする人々の主食作物であるエンセーテに関わる用例について報告した。これに加えて、日本国内でエチオピアのオモ系言語の研究に従事している言語学者も参加し、ものの循環とマテリアリティについて、言語学的な知見と人類学的な知見をふまえて議論を進めた。 2022年10月にはエチオピアの南オモ県の教育行政に関わる役人が編纂した語彙リストを入手する機会を得た。この語彙リストを編纂した現地の関係者と協議し、この研究プロジェクトで整理・分析を続けてきた語彙のリストを加えて、このプロジェクトの研究成果の一部として4700語を収録したアリ語の語彙集を刊行し、現地の教育機関を介して研究成果を還元した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四年度目の研究活動を終えて、以下の点で本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えている。本研究は、比較的湿潤な気候であるエチオピア高地を中心とした東アフリカと干ばつが頻発するニジェールを中心とした西アフリカを主な調査地域とし、在来・外来および耐久性を基準に分類した次の4類型が、ゴミとして不用になる過程とその物質的な循環を比較検討する。(1)在来非耐久財:地縁技術(在来素材を用い身体化された技術)により作りだされたモノ、(2)在来耐久財:地縁技術により製作されたモノ、(3)外来非耐久財:近代的技術(外来素材を用い大量生産をめざし規格化された技術)により生産されたモノ、(4)外来耐久財:近代的技術により生産されたモノ。加えて、学術交流や成果発信などを重ねることにより、ゴミ概念を再検討することも目指している。
本研究課題の四年目に入り、おもに語彙や用例に着目して、ローカルな事象としての「不用なモノ」の理解を深めることができている。これに加えて、国際ワークショップを開催したことにより、前述した4類型について、エチオピアのオモ系言語における用例を比較検討することが可能になった。有形のモノを対象にして物質的な循環を検討すると同時に、言語的な側面(無形のモノ)からも、「不用なモノ」について検討していくというアプローチをもとにして検討してきた結果をまとめ、ローカルな「(不用な)モノ」の循環における社会文化的な要素を明らかにしてその特徴を提示するための準備は進められてきている。このローカルな事象と、グローバルな課題として注目されている廃棄物に関わる問題群との関連性と断続性を多面的に理解するために、モノの4類型にそった、物質的なモノの循環とその循環に関与する人びとの在来の知についてさらなる検討を重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、アフリカにおいて、在来・外来および耐久性を基準に分類した次の4類型(1. 在来非耐久財、2. 在来耐久財、3. 外来非耐久財、4. 外来耐久財)にそって検討してきたモノの特性を、ローカルな事象とグローバルな課題と関連づけて検討してきた成果を、本研究プロジェクトのメンバーが個別の論文として準備して発信する。それに加えて、四年度にオンラインで開催した国際ワークショップ(廃棄物とマテリアリティについて)を、対面で開催する。この学術集会で多様な学術的な背景をもつ研究者が集まることで、エチオピアのオモ系言語集団におけるモノの物質的な循環とその循環をうながす在来知との関連性について提示するだけではなく、民族集団や国家を超えて生じている不用なモノの循環をめぐる課題について、文化社会的な観点からの問題提起することも可能だと考えている。このような点をふまえて、これまでの知見を書籍として刊行することも計画している。
四年度目に、エチオピアのオモ系言語のひとつであるアリ語の語彙集(アムハラ語―英語の対訳付き)を刊行し、現地の教育機関を介して地域の人びとに成果の一部を還元することができた。その際、現地の教育機関に勤務している関係者とは、この語彙集に掲載されている語彙や用例についての加筆修正について、情報共有する場や機会を設けることを提起し、今後も協働して語彙や用例を更新していくことになった。現時点では、印刷物での閲覧か、作成した語彙集のファイルをデータで共有するにとどまっているが、最終年度はウェブサイトにて語彙の検索サイトを構築、公開することと同時に、ウェブサイトを介して語彙や用例についての意見交換や情報交換などを可能にするような、現地の人びととの開かれた対話が可能になるような仕組みの構築をめざす。
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