研究課題/領域番号 |
18H03599
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今村 真央 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (60748135)
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研究分担者 |
小島 敬裕 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10586382)
池田 一人 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (40708202)
デスーザ ローハン 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (60767903)
高田 峰夫 広島修道大学, 人文学部, 教授 (80258277)
藤田 幸一 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (80272441)
倉部 慶太 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (80767682)
木村 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90468835)
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (90612937)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
43,680千円 (直接経費: 33,600千円、間接経費: 10,080千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2020年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2019年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2018年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | 国境 / 少数民族 / 文字文化 / 宗教 / 開発 / クーデター / ミャンマー / 社会還元 / 農村 / ゾミア / 文字 / 正書法 / インド北東部 / ロヒンギャ / インド / トンチャイ / 越境 / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
2021年2月に起こったミャンマーでの軍事クーデターは、ミャンマーを主な研究対象とする本プロジェクトに大きな影響を与えた。もともとコロナ禍により現地調査は無理な状況にあったが、クーデターによって現地の大学やNGOも活動停止に陥ったどころか、職場を離れる研究者やスタッフが相次いだ。本プロジェクトの協力者やインフォーマントにも深刻な打撃を与え、国外に逃亡したものも少なくない。 コロナ禍とクーデターという想定外の大事件が立て続けて起こり研究プランを予定通り遂行することは不可能となったが、劇的な変化を目の前に、「いまここで」研究者がどのように対応するべきかという状況的かつ倫理的な問いに直面する年となった。この問い自体を洗練し、研究の対象とすることが求められるだろう。クーデターの年の最大の成果はこの問いの(再)発見にあったのかもしれない。 フィールドワークが厳しい状況の中で、現地との研究者とオンライン研究会を定期的に催すといった営みを継続することはできた。また、本研究プロジェクトのメンバーの多くが状況に迅速に対応し、メディアでの解説、一般市民向けの講座、広い読者向けの論説といった形で、多大な社会貢献を果たした。コロナ禍のなか、公開イベントのオンライン開催が頻繁に開催されるようになり、研究の社会還元の方法も変わったことを認識できた。新たな状況を考察の対象とすることで人道支援など新しいトピックを見出すことができたことも記しておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症により、2020年3月から国外渡航が実質的に不可能になった。加えて、2021年2月にミャンマーで軍事クーデターが起こった。本プロジェクトは5年間の調査企画としてデザインされていたが、3年目にコロナ禍、そして4年目に軍事クーデターという二つの想定外の事件に見舞われ、大きな方向転換を余儀なくされた。影響が全世界に及んだコロナ禍とは異なり、クーデターはミャンマー国内の事件であったが、それだけに本プロジェクトのミャンマー研究者は緊急の対応に追われた。しかし、市民向けの講座やメディアでの解説といった役割を通して、思わぬ形でこれまでの研究社会還元の機会が与えられ、これに柔軟に対応できた。 現地調査が不可能な状況で、遠隔のデータ収集、データベースの構築、翻訳といった研究活動を精力的に進めることができたことも大きな収穫となった。東南アジア史の大家アンソニー・リードの通史本『世界史のなかの東南アジア』の邦訳を2021年12月に世に出すことができた。この書は東南アジア全域の特徴を簡潔に提示することで、南アジアとの差異を明らかにしている。もともとの研究プランが5年前の予定通りに進んでいないことは明らかであるが、想定外の「達成」や成果が生まれたことも確かである。
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今後の研究の推進方策 |
政治状況の劇的な変化に揺さぶられながらも、本プロジェクトにおける当初からの問題設定の意義を再確認することができたことも確かである。ミャンマーでは、コロナ禍とクーデターによって、各々の地域共同体が社会・経済的自立を求める傾向が高まった。もちろん、グローバルな時代においては「地域共同体」も往々にしてディアスポラ等との長距離ネットワークと連携しているので、複数の空間的スケールを用いることが求められる。ヴァナキュラー(民俗語)な制度作りの分析にはこれまで以上の重要な意義を認めることができる。国際学会やワークショップを通して、正書法という制度を複数の視点から多角的に分析していくことが今後の重要な方策となる。 また、現地調査が困難な状況だからこそ、研究の国際ネットワークを活用して、問いを洗練し、共有することも求められる。アンソニー・リード著『世界史のなかの東南アジア』は、東南アジアと南アジアの関係――とくに文字文化、文化・宗教面での影響――を考える上で示唆に富んでおり、今後の研究において大いに役だつであろう。リードが論じる民俗語化(vernacularization)という概念はとりわけ重要であり、本プロジェクトで様々な事例を通して検証していくことになる。
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