研究課題
基盤研究(A)
古琵琶湖層群堅田層から採取した3本のオールコア試料の中で、松山-ブリュンヌ(MB)境界を挟むKT1コアと、同境界の直上の層準を含むKT2コアを対象として追加の古地磁気分析を行った。KT1コアでは良好な古地磁気方位を得られる試料数が少なく、MB境界直前の古地磁気変動を詳細に復元するには至らなかった。この原因として硫化鉄鉱物の存在とその加熱酸化に伴う新たな磁気獲得の影響が指摘され、この影響を除いた古地磁気方位の決定が課題となった。KT2コアからの追加試料の分析では、MB境界直上の安定した正帯磁と相対的に強い地磁気強度が復元され、従来の研究で示されていた古地磁気変動と一致する結果が得られた。これらの点から,MB境界の上限がKT1コアの中部とKT2コアの下部に位置づけられることが確実になった。また,KT1コアとKT2コアの花粉分析を追加して古植生や古気候の復元の年代精度を高くし、古地磁気変動との関係を検討した。BM境界に先立つ正帯磁層準が酸素同位体層序(MIS)20中に位置づけられ、Pre-cursorに対比できる可能性が考えられたが、その上位の逆帯磁層準が明瞭ではなく、MB境界中の変動である可能性も否定できなかった。一方、MB境界の上限層準とその直上での磁化強度の増大時期が確実となり、その層準が花粉分析に基づく古気候復元では最温暖期に相当することが判明した。したがって、古地磁気層序から推定されたMIS19.3(最温暖期とされる)とは時代的なずれが生じていることが推定され、MIS19との対比において古地磁気層序と古気候層序にずれが生じている仮説を検証する一つの証拠を提出できた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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