研究課題/領域番号 |
18H03693
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三輪 浩司 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50443982)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2020年度: 14,820千円 (直接経費: 11,400千円、間接経費: 3,420千円)
2019年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2018年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
|
キーワード | ストレンジネス核物理 / 実験核物理 / ハイパー核、ストレンジネス |
研究実績の概要 |
本研究ではシグマ陽子散乱実験およびラムダ陽子散乱実験を行い微分散乱断面積を導出することによって、ΣNおよびΛN相互作用の解明することが大きな目的で ある。シグマ陽子散乱実験のデータ収集は終了し、Σ-と陽子の弾性散乱と非弾性散乱の断面積を導出し、論文として投稿している。本年度は、これまで解析を進めていたΣ+と陽子の弾性散乱の微分断面積を決定した。このΣ+と陽子の相互作用は、クォーク間のパウリ原理が働くことで斥力が強いと理論的に予想されている。その斥力が強いほど微分断面積が大きくなるが、我々が測定した微分断面積は非常に強い斥力を予言したクォーク模型に基づく相互作用理論に比べて非常に小さいものであった。これは斥力が当初の理論予想より小さいことを示していた。我々はこの斥力の強さを定量的に決定するため、微分断面積に対して位相差解析を行うことで、散乱の位相差を-20~-35度程度と初めて決定した。これはLattice QCDが予言していた位相差とコンシステントであった。我々が測定した3つのチャンネルの微分断面積をグローバルに再現するようにバリオン間模型の改善が進んでいるところである。 次期実験として考えているΛp散乱実験に関しては、物理結果の意義やシミュレーションによるフィージビリティの確認を進め、課題審査委員会でstage-1の承認を得ることができた。また、検出器の開発を進めている。高レートビームに対して時間測定するために、MPPCアレイを用いた高セグメント化されたシンチレーターホドス コープの開発を進め、8セグメントからならる1ユニットを製作した。またビームラインに設置する ファイバー検出器の開発を行い、6層からなる検出器の製作をおこなった。これらの検出器を東北大の電子光理学研究センターの陽電子ビームに照射し、性能評価をおこい良好な性能が得られていることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シグマ陽子散乱実験については、当初予定していた3つのチャンネルの微分断面積の導出に成功したことは、本研究の大きな成果であると考えている。また、特にΣ+pのチャンネルについてはハイペロン陽子散乱実験で世界で初めて位相差解析から散乱の位相差を決定することが出来たのは、大きな研究の進展であったと考えている。位相差を決定することで、Lattice QCDが予言する位相差との直接の比較が初めて可能になったといえる。このΣ+pの成果については、記者説明会を行なってプレスリリースした。Yahooニュースなどのネットメディアにも取り上げられ、一般の方々へも研究成果を還元することが出来たのではないかと考えている。 従来は「不可能」と考えられていた測定が実現したことで、2体のバリオン間相互作用の研究が新しいフェーズを迎えている。我々のデータを取り入れることで、現実的なバリオン間相互作用を構築しようという新しい流れを確立することが出来た。これは今後のストレンジネス核物理の基盤をより確固としたものにすることが出来ると確信している。
|
今後の研究の推進方策 |
E40実験ではπ-p→K0Λ反応の Λのスピン偏極のデータをバイプロダクトとして同時に収集した。この偏極の解析をほぼ完了し、ほぼ100%のスピン偏極をしていることを確認した。さらに数は少ないが、すでに既存のデータにΛ陽子散乱事象が含まれていると考えられ、この散乱事象を同定し、これから微分断面積の導出を目指す。これらをまとめて投稿論文として発表することを目指す。次期Λp散乱実験では、このスピン偏極したΛビームを用いて、微分断面積に加えて、スピン観測量 も測定する予定であり、E40のデータは、このための基礎データとなる。 検出器開発に関しては、本研究ではビームラインに設置する高セグメントのホドスコープ及びビームラインファイバートラッカーの製作を目指す。次年度は、ビームラインホドスコープの実機の組み上げを行い、検出器全体としての性能の評価を行う。またファイバー検出器は、初めに製作したXX'層は、その製作過程で試行錯誤したこともあり、残りの層に比べるとファイバーの位置の精度などが劣っている。そのため、このXX'層を製作し直す予定である。これらの検出器開発で、ビームライン検出器の大部分は完成すると考えている。
|