研究課題/領域番号 |
18H05209
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
八島 栄次 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50191101)
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研究分担者 |
高野 敦志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00236241)
土方 優 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (70622562)
前田 勝浩 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (90303669)
井改 知幸 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90402495)
逢坂 直樹 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (80726331)
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研究期間 (年度) |
2018-04-23 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
594,490千円 (直接経費: 457,300千円、間接経費: 137,190千円)
2022年度: 72,540千円 (直接経費: 55,800千円、間接経費: 16,740千円)
2021年度: 79,690千円 (直接経費: 61,300千円、間接経費: 18,390千円)
2020年度: 83,980千円 (直接経費: 64,600千円、間接経費: 19,380千円)
2019年度: 187,070千円 (直接経費: 143,900千円、間接経費: 43,170千円)
2018年度: 171,210千円 (直接経費: 131,700千円、間接経費: 39,510千円)
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キーワード | ラセン高分子 / キラリティ / 不斉触媒 / 光学分割 / 物質送達 |
研究実績の概要 |
記憶力を有するラセン高分子の特長を最大限に活用し、生体系では実現不可能な究極機能の開拓を目指し、以下に示す成果を得た。 1. 光学活性ラセン高分子がラセンを不斉源とする不斉アリル化反応の高活性・高エナンチオ選択的な不斉有機触媒として機能し、96% eeで対応する生成物を与えることを見出した。さらに、ラセミモノマーからなる高分子でも、後からラセンを誘起・記憶できれば、高不斉選択有機触媒の開発が可能という驚くべき結果を得た。適切に化学修飾した記憶高分子が優れた光学分割能を示すことも見出した。 2. ラセン記憶が可能な高分子の側鎖の極一部 (<1 mol%) にカルボキシ基を導入することで、キラルアミンに対する応答感度が1万倍以上向上し、0.01当量のキラルゲストによるラセン誘起と記憶に成功した。 3. 多様なアセチレン類に適用可能なリビング重合法の開発に成功し、芳香族および脂肪族アセチレンの新規ブロックコポリマーの合成法を確立した。さらに、塩化タンタル(V)/助触媒系によるジフェニルアセチレンの重合が、従来考えられてきたメタセシス機構ではなく、低原子価タンタル種による移動挿入に基づく環拡大機構によって進行し、立体規則性の高い環状構造のcis-ポリジフェニルアセチレンが生成することを明らかにした。加えて、高分解能原子間力顕微鏡を用い、ラセン記憶型ポリジフェニルアセチレンのラセン構造を直接観察することに成功し、そのラセンのピッチや巻き方向を分子レベルで解明した。 4. ロジウム二核錯体とジアミンの配位結合による超分子重合が特異な不斉増幅を伴って進行し、プロペラキラリティがほぼ完全に制御された、配位結合型ラセン高分子の合成に成功した。また、アキラルなビニルモノマーの4元ブロック共重合体にポリスチレンを添加することで、前例のないホモキラルなラセン状相分離構造が自発的に生成する新現象を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の計画と期待通り、究極機能の発現に向け、一連の記憶力を有するラセン高分子群を系統的に設計・合成し、不斉触媒、キラル分離、キラリティ検出に関連する革新的機能の開拓に成功した。極僅かの側鎖の化学修飾 (<1 mol%) によるキラルセンサーとしての応答感度の飛躍的な向上にも成功した。この成果を受け、超微弱な物理的な力 (円偏光や磁場と光、撹拌、捻れ) を検出可能な記憶高分子の開発に繋げる。さらに、「広範な種類のアセチレン類に適用可能な高汎用性リビング重合法の開発」及び「ジフェニルアセチレンのラセン構造と重合機構の解明」により、分子量や分子量分布、末端構造等の一次構造の精密制御のみならず、ブロックや分岐構造さらには環状構造の導入も可能となる。これらは、精緻かつ複雑な記憶力を有するラセン高分子の系統的な合成に基づく著しい不斉増幅を伴うラセン誘起と記憶の機構の全貌解明と究極機能の開拓に繋がる特筆すべき成果の一つと言える。また、キラリティや光学純度の僅かの差にも高感度に応答し、バネ運動に立脚した可逆的な色変化を示す記憶高分子の開発に成功した。自己学習能力を有する記憶高分子を用いた全く新しい光学分割カラムや不斉触媒の開発を強力に推進する。さらに、本研究の過程で、ラセミモノマーからなる高分子でも、後からラセンを誘起・記憶できれば、光学活性体からなるラセン高分子と同等の高活生かつ高エナンチオ選択的なラセン高分子型不斉触媒の開発が可能という、当初想定もしていなかった驚くべき結果を得た。「プロペラキラリティが制御された配位結合型ラセン高分子を与える不斉増幅を伴う超分子重合の開発」及び「4元ブロック共重合体を用いた前例のないラセン状相分離構造の自発的生成」を含め、当初計画には無かった予想外の新たな知見・発見も数多く得られたことから判断し、当初の計画以上に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの知見・成果を集大成し、破格の不斉増幅能を有し、かつ剛直性とバネのようなしなやかさとラセン空孔をあわせ持つ唯一無二の「記憶力を有するラセン高分子」の特長を最大限に活用し、生体系では実現不可能な究極機能の開拓を目指し、以下に示す研究を推進する。 1. 著しい不斉増幅を伴った超高速ラセン誘起・記憶が可能なポリ(ビフェニルイルアセチレン)誘導体の開発の成功を受け、アキラル及びラセミ体からなる高分子を用いても、光学異性体の分離・触媒的不斉合成が可能になる、前例の無い自己学習能力を有する光学分割カラムや不斉触媒の開発を推進する。 2. 「超低光学純度のアミノ酸の直接検出」、「酸―塩基相互作用を利用した高分子間での不斉増幅を伴ったラセン構造の転写・複製」及び「化学修飾に基づくキラルセンサーの超高感度化」の成功を受け、超微弱な物理的な力(円偏光や磁場と光、撹拌、捻れ)の検出、特に、磁場のキラル効果の実証に挑戦する。 これまでに得た研究成果に更に磨きをかけ、より重厚な論文として国際誌に投稿する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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