研究課題
基盤研究(S)
本研究では、RNA 修飾の変動と制御という新しい概念を確立し、エピトランスクリプトミクス研究におけるパラダイムシフトを目指す。本年度は主に以下の成果を得た。U6 snRNAには、N6メチルアデノシン(m6A)が一か所存在するが機能は不明であった。分裂酵母を用いて、この修飾の機能を解析したところ、スプライソソームがmRNA前駆体を認識する際において、U6 snRNAのm6A修飾が特定の配列を持つイントロンとの結合を安定化することで、スプライシングの効率を上げることが判明した。この機構はU5 snRNAとエキソンの相互作用が弱い時に、特に重要である。ゲノム中に多数のイントロンを有する真核生物では、U6 snRNAのm6A修飾が5’スプライス部位におけるエキソン配列に自由度を与えることで、タンパク質のアミノ酸配列の多様性を許容する役割があると考えられる。本研究は、m6A修飾の役割を解明しただけでなく、スプライソソームの重要な構成因子であるU5 snRNAとU6 snRNAが協調的にmRNA前駆体を認識することの機能的な重要性を明らかにした(Nature Commun., 2021)。セレン含有タンパク質であるSELENONは、セレンの高い還元作用を用いて、酸化ストレスから細胞を保護する役割がある。SELENONの発現制御は骨格筋の形成や機能に重要な役割を担っている。本研究により、SELENONが筋分化の過程において、RNA編集およびリコーディング制御の2つの転写後制御機構により、発現調節されていることが明らかとなった。リコーディング制御はこれまで報告されていない新規の現象であり、遺伝子発現制御の概念を大きく拡張させるものである(Nature Commun., 2022)。RNAの可逆的なリン酸化修飾を発見した成果がNatureに掲載された(Nature, 2022)。
1: 当初の計画以上に進展している
RNA修飾の機能解析では予想以上の成果が得られた。特に、40年以上も機能が不明であったU6 snRNAのm6A修飾の機能を解析した成果は大きな反響があった。また、重篤な筋疾患の原因遺伝子として知られるSELENONが、筋分化の過程で精密に制御される発現調節機構を明らかにした。さらに、可逆的なRNAのリン酸化修飾を見出した成果はNature誌に掲載され、RNA業界だけでなく、生命科学全体で大きな反響があった。
RNA修飾が生育環境や細胞内メタボライトによってダイナミックに変動する現象を引き続き探求する。特に嫌気環境におけるRNA修飾の変動と役割について集中した研究を行う予定である。新規RNA修飾については、現時点で、未発表のものを約20種類発見している。この中には、新規キャップ構造や欠損型塩基など、これまでに類の見ないタイプのものが含まれている。本研究では、新規RNA修飾の更なる探索を継続すると共に、新規修飾の化学構造の決定、生合成機構の解明、機能解析を行う予定である。
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
すべて 2022 2021 2020 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (19件) 雑誌論文 (39件) (うち国際共著 11件、 査読あり 39件、 オープンアクセス 24件) 学会発表 (64件) (うち国際学会 19件、 招待講演 28件) 図書 (7件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
Nucleic Acids Research
巻: - 号: 8 ページ: 4713-4731
10.1093/nar/gkac228
Nature Communications
巻: 13 号: 1 ページ: 2503-2503
10.1038/s41467-022-30181-2
Nature
巻: - 号: 7909 ページ: 372-379
10.1038/s41586-022-04677-2
巻: 13(1) 号: 1 ページ: 3706-3706
10.1038/s41467-022-31418-w
巻: 12 号: 1 ページ: 3244-3244
10.1038/s41467-021-23457-6
Nature Reviews Molecular Cell Biology
巻: in press 号: 6 ページ: 375-392
10.1038/s41580-021-00342-0
The EMBO Journal
巻: 40 号: 14
10.15252/embj.2020106434
巻: 40 号: 15
10.15252/embj.2021107976
Molecular Cell
巻: 81 号: 15 ページ: 3160-3170.e9
10.1016/j.molcel.2021.06.005
Methods Enzymol
巻: 658 ページ: 407-418
10.1016/bs.mie.2021.06.012
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 118 号: 42
10.1073/pnas.2106556118
Cell Rep.
巻: 37(12) 号: 12 ページ: 110130-110130
10.1016/j.celrep.2021.110130
International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 号: 21 ページ: 11454-11454
10.3390/ijms222111454
巻: 81 号: 4 ページ: 674-674
10.1016/j.molcel.2020.12.038
Science Advances
巻: 7 号: 13
10.1126/sciadv.abf3072
生化学
巻: 92 号: 3 ページ: 431-446
10.14952/SEIKAGAKU.2020.920431
40022295381
The Journal of Biochemistry
巻: 167 号: 5 ページ: 451-462
10.1093/jb/mvaa022
40022226787
Nucleic Acids Res.
巻: 48 ページ: 7532-7544
10.1093/nar/gkaa487
巻: 117 号: 34 ページ: 20785-20793
10.1073/pnas.2003358117
巻: 11 号: 1 ページ: 1-15
10.1038/s41467-020-18068-6
巻: 39 号: 20
10.15252/embj.2020104708
Nat Commun.
巻: 11 号: 1 ページ: 5438-5438
10.1038/s41467-020-19281-z
Methods in Molecular Biology
巻: 2192 ページ: 89-101
10.1007/978-1-0716-0834-0_8
J Biol Chem
巻: 295 号: 2 ページ: 390-402
10.1074/jbc.ra119.011617
巻: 47 号: 8 ページ: 4226-4239
10.1093/nar/gkz111
巻: - 号: 11 ページ: 5936-5949
10.1093/nar/gkz270
巻: 10 号: 1 ページ: 2858-2858
10.1038/s41467-019-10750-8
巻: 47 号: 16 ページ: 8734-8745
10.1093/nar/gkz575
Journal of Bacteriology
巻: 201 号: 21 ページ: 1-17
10.1128/jb.00448-19
巻: 10 号: 1 ページ: 5542-5542
10.1038/s41467-019-13525-3
The FASEB Journal
巻: 34 号: 1 ページ: 1859-1871
10.1096/fj.201800389r
RNA
巻: 26 号: 3 ページ: 240-250
10.1261/rna.072066.119
Methods
巻: 156 ページ: 66-78
10.1016/j.ymeth.2018.12.007
巻: 47 号: 4 ページ: 1964-1976
10.1093/nar/gky1313
Science
巻: 363 号: 363 ページ: 1-7
10.1126/science.aav0080
Nature Commun.
巻: in press 号: 1 ページ: 1875-1875
10.1038/s41467-018-04250-4
Nature Chemical Biology
巻: 14 号: 11 ページ: 1010-1020
10.1038/s41589-018-0119-z
Scientific Reports
巻: 8 号: 1 ページ: 5801-5801
10.1038/s41598-018-24251-z
Chemical Communications
巻: 54 号: 69 ページ: 9627-9630
10.1039/c8cc03713b
http://rna.chem.t.u-tokyo.ac.jp/en/index.html