研究課題/領域番号 |
18H05294
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分K
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
藤田 秀二 国立極地研究所, 先端研究推進系, 教授 (30250476)
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研究分担者 |
平林 幹啓 国立極地研究所, 先端研究推進系, 特任助手 (20399356)
飯塚 芳徳 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (40370043)
大野 浩 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80634625)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
115,180千円 (直接経費: 88,600千円、間接経費: 26,580千円)
2022年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
2021年度: 20,930千円 (直接経費: 16,100千円、間接経費: 4,830千円)
2020年度: 21,320千円 (直接経費: 16,400千円、間接経費: 4,920千円)
2019年度: 37,180千円 (直接経費: 28,600千円、間接経費: 8,580千円)
2018年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
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キーワード | 南極 / 氷床 / アイスコア / 古気候 / 気候変動 / 最古の氷 / 古環境 / 年代同期 / ドームふじ |
研究実績の概要 |
当初計画に従い、以下の項目の研究を遂行した。 Ⅰ.アイスコアの物理層位の計測:①ミリ波誘電率テンソルの計測を2400m深から深い側に延伸した。② ①とあわせ、結晶C軸方位の直接計測とを実施し比較を実施した。③水平面内での誘電テンソルの主軸2成分の差を明らかにする分析を実施した。④ミリ波誘電テンソルにかかる研究成果の論文化を開始し、2021年4月と11月にそれぞれ投稿し、前者は出版に至った。後者は公開査読論文として出版され、本報告執筆時には公開査読が継続されている。 Ⅱ.連続融解計測装置系(CFA)を用いたアイスコアの化学層位計測:①2019年度までに開発した小型融解ヘッドの試験を重ねている。ただし、ドームふじアイスコアの分析・消費については、他研究分野との調整の必要が生じ、この計測実施を最終年度に延期した。②ドームふじアイスコアの中層のアイスコアとしては、約570m深~600m深の試料についての連続解析を実施した。また同様に、ドームふじ近傍で2017/2018年に新たに掘削された152m長の浅層コアについて、約75m深よりも浅い深度区間の計測を完了した。 Ⅲ. 塩微粒子の層位にかかる研究:不純物の存在状態の検知計測を、ラマン分光散乱を用いて継続した。 Ⅳ. アイスコアの信号形成にかかるプロセスにかかる研究:2020年度は、以下の2点についての研究を推進した。氷床に閉じ込められてから数百年程度以内の深度約100-120m深の気泡をラマン分光散乱で解析し、気泡中の酸素と窒素の分別比を実測した。 このほか、ドームふじアイスコアの固体電気伝導度解析として前年度まで実施してきたDEPデータの解析、氷床探査用レーダの観測データとアイスコアデータとの比較、アイスコア間の気候変動イベントの年代差の抽出作業を、同期進捗に応じ随時実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で実現を目指す目標は当初から以下の4項目を掲げてきた。①古気候情報としての価値創出、②経時変質の性質を解明、③複数のコア間の年代同期、④今後掘削する非常に古いアイスコアの質を予測。 ①の古気候情報としての価値創出としては、ドームふじアイスコアの誘電テンソル計測を実施し、国際的に見ても前例の無いレベルの統計的有意性やデータ詳細度をもったデータを得て、出版プロセスに至っている。アイスコアの年代決定や変形にかかる情報を着実に得ている。さらには、計測はさらに深部(年代の古い側)に向けて延伸を続けている。この点は着実な成果をあげている。一方、連続融解計測装置系を用いた計測に関しては、着実にすすめた部分と、装置系の調整やCOVID-19にかかる社会情勢に応じて在宅勤務をせざるを得なかった事情により後年次に延期した部分がある。 ②経時変質の性質を解明については、ドームふじアイスコアの結晶主軸分布が経時変化としてどのように発展したかについて主要な進展をみた。論文化をすすめた。 ③複数のコア間の年代同期については、深度2400以深の連続融解解析の後年次への延期に起因して、この深度に関しては新たな発展を得ていない。 ④今後掘削する非常に古いアイスコアの質を予測については、上記①や②の結果とそれに対する考察、さらには、現地で観測したレーダ探査の結果を合わせ、重要な考察作業を実施している。これらは、投稿論文としてまとめている。さらには、南極のドームふじ地域の詳細な氷厚地図を作成し、投稿作業をすすめている。 概して、①②④は着実に進展しているが、③については後年次への延期と研究計画の見直しをすすめている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い、以下の項目の研究を伸ばしていく。 Ⅰ.アイスコアの物理層位の計測:ミリ波誘電率テンソルの計測を2400m深から深い側に延伸を続け、結晶C軸方位の直接計測との比較を実施する。論文発表も継続して実施する。Ⅱ.連続融解計測装置系(CFA)を用いたアイスコアの化学層位計測:小型融解ヘッドの試験を重ね、2400-3000m深の範囲での信号の拡散を調査する目的での分析をすすめる。Ⅲ. 塩微粒子の層位にかかる研究:不純物の存在状態の検知計測を、ラマン分光散乱を用いて継続する。Ⅳ. アイスコアの信号形成にかかるプロセスにかかる研究として、氷床に閉じ込められてから数百年程度以内の深度約100-120m深の気泡をラマン分光散乱で解析し、気泡中の酸素と窒素の分別比を実測する研究をすすめる。このほか、ドームふじアイスコアの固体電気伝導度解析、DEPデータの解析、氷床探査用レーダの観測データとアイスコアデータとの比較をすすめる。 上記の実作業を通じ、①古気候情報としての価値創出:アイスコアの年代決定や、層・深度毎の歪量の推定に関して知見の新たな軸を示していく。②経時変質の性質を解明:①とあわせて、さらに深部にいたる状況を明らかにしていく。③複数のコア間の年代同期:他のアイスコア研究との調整のため分析数を減らさなければならない状況となり、当初計画よりも実施深度を削減せざるを得ないが、連続融解解析を実現できる深部についてはこの作業を試みる。④今後掘削する非常に古いアイスコアの質を予測:考察作業と論文作成作業を継続する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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