研究実績の概要 |
本年度は、二次元構造化ポリリジンを合成するためのルート構築に重点を置き、研究を行った。以下、本年度に達成した具体的な研究成果を記す。 はじめに、単純な構造のグリシン誘導体を繰り返し単位として用い、アミド結合形成反応と脱保護反応を繰り返すことによって多量化させ、多角形の辺を構成するポリペプチド鎖を合成した。続いて、多角形の頂点となる芳香族性部位を、同様のアミド結合形成反応により導入した。そして、アミド縮合による環化反応によって、多角形型大環状分子の合成を試みた。当初は環化反応のステップにおいて、直鎖状オリゴマーのみが得られる結果となっていたが、様々な縮合剤を検討した結果、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1, 2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)を用いた際に、選択的に環化体を得られることを見出した。さらに、基質濃度を調節することによって、得られる大環状分子の大きさまでもコントロールできるようになった。現在までに、正三角形型、正四角形型、および正五角形型の大環状分子の合成に成功している。これらは、当初想定していた以上の成果である。 得られた多角形型大環状分子はいずれも水溶性であるため、今後は種々の生体分子との相互作用を評価していく予定である。なお、本研究成果は、2019年5月に大阪にて行われる高分子学会年次大会において発表する予定である。
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