研究実績の概要 |
大腸菌等のグラム陰性菌外膜にはβバレル型膜タンパク質が存在し、これらは生育、感染および、毒物の排出等、重要な役割を担う。βバレル型膜タンパク質の外膜への正しい立体構造を伴った組込みは、BAM複合体と呼ばれるタンパク質複合体によって行われる。BAM複合体はBamA, B, C, D, Eの5つのタンパク質から構成されており、近年その立体構造が解かれたが、各サブユニットの役割等は不明なままである。本研究では、研究者が独自に開発したin vitro再構築実験系、EMMアセンブリーアッセイを用いて、各サブユニットの役割の決定を通して、BAM複合体の分子機構の解明を目指す。 これまでに、EMMアセンブリーアッセイによる解析から、BamCはBAM複合体から基質タンパク質を送り出す役割を担っていることを明らかにした。報告されているBAM複合体の立体構造では、BamCはその一部が観察されているのみで、大部分の構造は観察されていなかった。そこで、in vivo部位特異的光架橋法により生細胞内でのBamC分子全体の相互作用マップを作製し、BamCのC末端ドメインがBamAの細胞表層に露出している部分と相互作用していることを明らかにした。この配置は、ミトコンドリアに存在するBAM複合体のホモログSAM複合体に存在するSam37と同様であった。Sam37は、BamCと同様に基質の送り出しに関わるため、両者は同様の分子機構を有していると考えられる。その他、EMMアセンブリーアッセイを用いて、BAM複合体の機能を阻害するペプチド断片を数種決定した。現在、その他のサブユニットの機能解析を進めると共に、阻害ペプチドの作用機構を解析し、機能に重要な領域を決定することを試みている。
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