研究実績の概要 |
本研究では心不全患者における心筋線維化および冠血流予備能の意義を心臓MRIを用いて検証した。 心筋線維化の指標であるT1マッピングのnative T1 timeとExtra cellular volume fraction(ECV)を非虚血性心不全の重症例、非重症例で差があるのか否か検討した。39症例の非虚血性心筋症患者(平均年齢:64±13歳、平均LVEF:38±12%)を対象とし、18症例のhigh-risk群(心臓死、MRI撮影後の心不全入院、ICDもしくはCRTDの植え込み、薬物治療に対する治療抵抗性)と21例の非high-risk群の2群に分けて解析すると、T1mappingでは有意差を認めなかった(1089±73msec vs 1088±39msec, p=0.98)が、ECVはhigh risk群で有意に高値であった (0.33±0.07 vs 0.28±0.04, p=0.024)。非虚血性心筋症における非侵襲的なリスクマーカーとしてMRIによるECVが有用である可能性が示唆された。 心不全患者における冠血流予備能(MRI-CFR)の意義を検討するために、73名の虚血性心筋症による心不全患者の解析を行った。心不全患者のMRI-CFRの平均値は2.34±0.53であり、健常者と比較して低下を認めた(健常者のMRI-CFR:3.0-4.0)。中央観察期間2.6年のフォローアップ期間中に、心臓死2名(3%)、心不全増悪による入院を8名(11%)に認めた。MRI-CFRの高度低下(<2.0)は、心不全患者においても有意な予後規定因子であった(Log-rank test, p<0.05)。多変量解析において、左室収縮能(LVEF)、MRI-CFR <2.0は独立した危険因子であった。MRI-CFRは心不全患者の新たなリスクマーカーとして有用な可能性が示唆された。
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