そこでCARをコードするRNAを細胞内に導入することで、CAR-T細胞を作成した。これによりCAR発現期間制御と、ドナー幹細胞の生着率向上を得ることを目指した。HSPCマーカーとして、c-kit、sca-1、CD34を選択した。それぞれに対する抗体を産生するハイブリドーマを入手し、抗体可変部位のDNA配列を決定した。CARの骨格構造を含む既報のプラスミドに、新たに同定したDNA配列を挿入し、各CARを発現するプラスミドを作成した。これを用いてin vitroでRNAを合成し、T細胞に注入し、CAR発現の安定性と発現期間を確認した。この結果を踏まえて、健常C57BL/6マウス(Thy1.1/CD45.2)から回収したT細胞を用いて、CAR-T細胞を作成し、健常レシピエントマウス(Thy1.2/CD45.2)に経静脈的に投与した。経時的に末梢血球数や骨髄細胞数、CAR-T細胞数を計測することで、前処置としての有効性を確認できた。
続いて、骨髄ドナーマウス(Thy1.2/CD45.1)から造血幹細胞を回収し、CAR-T細胞で前処置をしたレシピエントマウスに同種移植した。移植後の血球生着を評価し、CAR-T細胞やドナー骨髄細胞の最適な投与量・タイミングについて検討できた。
健常マウス間での移植方法が確立したことを踏まえて、慢性肉芽腫症疾患マウスを用いて、同様の移植を行った。この際、活性酸素産生能など機能的評価を行い、移植効果判定を行った。また、一連の実験においては、骨髄間質に豊富なケモカインに対する受容体(CXCR4)を共発現させ、CAR-T細胞の骨髄への誘導にも成功した。
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