研究実績の概要 |
本年度は,ループ構造を持つ高エネルギー軌道の相空間構造を解析するために有用なポアンカレ断面を導入し,平面円制限三体問題においてラグランジュ点L1, L2, L3周りのリアプノフ軌道に付随する安定多様体を解析した結果,エネルギー的な禁止領域が消失してもL1, L2, L3に付随する安定多様体が互いに協働して相空間内に閉じたセパラトリクス構造を形成することを見出した.非線形性の弱い低エネルギー条件とは異なり,線形解析からは予測できない本質的な非線形現象であると考えられる.さらに,低エネルギー条件における安定多様体チューブ内部のtransit orbitの定義を拡張することで,高エネルギー条件においてL1, L2, L3に付随する安定多様体に囲まれた軌道群は低エネルギー条件下のtransit orbitと共通の性質を持つことを明らかにした.地球-月系および太陽-木星系において定性的に同じ結果が得られており,系によらない普遍的な現象であることが示唆される. また,低エネルギー条件における衝突軌道の遷移軌道解析への利用可能性を明らかにするため,平面円制限三体問題を用いて天体から離れたポアンカレ断面への衝突軌道の到達可能性を調べた.その結果,地球-月系および太陽-木星系において,極低エネルギー条件では衝突軌道が天体近傍から離脱できないが,極低エネルギー条件を除く低エネルギー条件では,中・高エネルギー条件と同様に衝突軌道がポアンカレ断面に到達できるため,遷移軌道解析にその相空間構造が有用であることがわかった. 以上の本年度の研究成果をまとめると,平面円制限三体問題において,ラグランジュ点に付随する遷移現象の理解の枠組みを低エネルギー条件から高エネルギー条件に拡張し,天体近傍への遷移現象の衝突軌道に基づく解析手法を高エネルギー条件から低エネルギー条件に拡張した.
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