研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、農作物被害に関与する獣類の糞の分析から、個体毎の生態を解明し、どの個体が、どこで、どれくらい農作物を加害しているのかを可視化する手法を開発するために、ニホンジカ(以下シカ)を研究対象とした手法開発に取り組んだ。そのために、DNAと安定同位体分析を組み合わせたアプローチを用いて、シカの個体の属性・行動圏・食性の3つを明らかにするために研究をおこなった。シカの生態を明らかにするうえで重要な、これら3項目の情報のうち、2019年度はシカの個体の属性と行動圏に関わる研究に取り組んだ。まず、糞試料から、植物由来であることが明らかである「セルロース」を抽出して分析をおこなうため、抽出手法を検討した。初期は抽出・遠心分離・洗浄を繰り返す手法を用いていたが、改良をおこない、固相抽出器具をもちいた方法を開発し、実験の所要時間を短縮した。続いて、食性の指標としての同位体分析と同様に、糞の安定同位体比がエサの同位体組成を反映するかを確かめるために、採餌実験試料からセルロースを抽出し、酸素同位体分析をおこなった。また、個体を識別するために用いるマイクロサテライト領域を分析するうえで必要なDNA抽出について、食性情報を得るためのDNA抽出とプロトコルを、植物DNAの抽出キットを用いた方法で共通化し、所要時間とコストを短縮できることを検証した。得られたDNA抽出物からは、既往研究でニホンジカの個体識別のために開発された4遺伝子座位を増幅し、個体識別のための情報として利用出来ることが確かめられた。以上のように、2019年度におこなった研究により、分析試料から様々な成分を精製して分析に供するための一連のプロトコルを確立した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 6件)
New Phytologist
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