研究課題
特別研究員奨励費
野生型イネ(ノトヒカリ)を異なる無機リン酸(Pi)施肥条件下で栽培し、無機リン酸量を増大させた生葉における光合成駆動時の葉緑体局在型ATPシンターゼの回転活性(gH+)は、高リン酸施肥により葉身Pi量が増加する条件で低下することを明らかとした。本年度は同条件下において光合成駆動時の代謝物の定量を行うことでATPシンターゼの回転活性低下の原因解明を試みた。ノトヒカリをリン酸施肥条件を5区画(低Pi条件,標準Pi条件、標準2倍量Pi施肥条件、標準3倍量Pi施肥条件、標準4倍量Pi施肥条件、標準5倍量Pi施肥条件)設定し、水耕栽培条件下で生育させた。発芽後70日以降の最上位展開葉を明条件下でサンプリングした後に、早急に液体窒素にて凍結させ光合成駆動時の代謝反応を即時に停止させた。サンプリングした葉は、代謝物抽出後にトリプル四重極キャピラリー電気泳動質量分析装置により各種代謝物の定量を行った。これに加え、ATPシンターゼ活性変異体の作成は、ノトヒカリを用い、gH+活性制御に関わると考えられるγ-subunitのATPシンターゼ過剰発現体及びゲノム編集体の作成を行った。代謝物解析の結果、ATP、ADP、AMPの全量はリン酸施肥量の増加に伴って増加することが明らかとなったが、光合成駆動時のATP/ADP比の算出を行うとリン酸施肥量の増加に伴ってATP/ADP比が有意に増大することが明らかとなった。このATPが余剰する状況は、前年度に明らかとしたRubiscoの活性化率低下に伴うカルビンサイクルの回転速度の低下と一致するデータである。これらの結果から、gH+はこれまで報告されていたような単純に細胞内のPi量によって変動するだけではなく、葉緑体内部の代謝回転をATP/ADP比の変化で検知することで変化していることが新規に明らかとなった。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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