研究課題
特別研究員奨励費
匂い認識の第一段階は、嗅神経細胞による匂い分子の識別である。個々の嗅神経細胞ではそれぞれただ一種類の嗅覚受容体が発現しており、匂い分子との親和性を反映した組み合わせコードとして、匂い情報が読み取られる。従来、混合臭に対する嗅神経細胞の応答は、個々の匂い成分に対する応答の線形的な足し算になると考えられてきた。しかしながら前年度、報告者は、高感度な計測手法である二光子蛍光カルシウムイメージングを用いることで、実際には混合臭に対する応答が拮抗的に抑制される“拮抗作用”や、相乗的に増強される“相乗効果”が生じることを見いだした。そこで当該年度では、引き続き嗅神経細胞の匂い応答を計測することで、混合臭に対する非線形応答の法則性を明らかにすることを目指した。その結果、高濃度の混合臭(3% v/v)をマウスに嗅がせたところ、相乗効果はほとんど確認できなかったのに対し、拮抗作用は最大16%の細胞において確認された。また逆に低濃度の混合臭(0.3% v/v)では、拮抗作用はほとんど確認されなかったのに対し、相乗効果は最大28%の細胞において確認された。以上の実験から、混合臭の濃度によっては、拮抗作用と相乗効果が偏って生じる傾向にあることが明らかとなった。拮抗作用は、匂い分子が拮抗阻害薬として機能する稀な現象として、過去に何例か報告されていたが、本研究によってはじめて生体内で広く見られる現象であることが明らかになった。一方で、相乗効果に関しては、本研究によって発見された全く未知の現象であるため、今後、詳細な分子メカニズムを調べる必要があるだろう。最終的に、本研究における三年間の成果はCell Reports誌に掲載され、新聞等で広く紹介されるに至った。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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