絶対零度における相転移点である量子臨界点(QCP)近傍では、量子ゆらぎの発達による異常物性が観測されている。とりわけ、f電子を含む重い電子系化合物ではQCP近傍で多彩な電子状態が実現している。しかし、重い電子系化合物は相転移を起こす温度スケールが非常に低く、従来の希釈冷凍機温度までの物性測定では相図を理解することが困難であった。 本研究は、YbRh2Si2やCeCoIn5などの重い電子系化合物が磁場下で示す量子臨界挙動を解明することを目的とする。そのために、数mKの超低温度領域まで試料を冷却した上で磁場を印加できる測定システムを構築する。本研究によって超低温度領域の物性測定のノウハウを確立することができれば、その測定技術を様々な強相関電子系物質に応用することが可能であり、強相関電子系物質の研究にブレークスルーを起こすことができる。 今年度は、核断熱消磁冷凍機の試料スペースに角度回転機構を取り付けることで、試料を冷やしたまま磁場角度を変化することを可能とした。これによって、キャパシタンス法を用いた磁気トルク測定を広い磁場角度範囲で行えるようになるため、今後、量子振動の角度依存性から、量子臨界挙動を精査することが可能となる。
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