研究課題/領域番号 |
18J01565
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
脳計測科学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 将史 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2019年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 神経科学 / 意思決定 / カルシウムイメージング / 光遺伝学 / オプトジェネティクス |
研究実績の概要 |
本研究課題は,動物が意思決定において,得られる報酬とそのための行動に対するコストをどのように勘案して意思決定を行っているかを明らかにすることを目的とする.加えて,それらがなされているときの軸索および樹状突起,細胞体の活動の関係を記述することを目指す. 本年度は,報酬と行動コストのうち,報酬に関する大脳皮質内での情報処理過程について,重点的に研究を行った.具体的には,単純な古典的条件づけ課題をマウスに課し,課題遂行時の大脳皮質全域の活動を広域カルシウムイメージング法で,前頭皮質4領域の単一細胞体レベルでの活動計測を二光子カルシウムイメージ ング法によって観察した. 加えて,前頭皮質4領域のの古典的条件づけへの寄与を明らかにするため,チャネルロドプシンを大脳皮質の抑制性細胞に発現する動物を用いて,当該課題中の神経活動抑制を行った. 大規模神経活動データを統計数理モデルを用いて詳細に解析した結果,今回観察した前頭領域のうち,背内側前頭皮質(高次運動野と一部オーバーラップする)では,他の領域よりも過去の報酬履歴を保持する神経細胞の割合が多く,またなんらかの形で課題に関連する活動(ただし運動関連は除く)を示す細胞の割合は9割近かった. さらに光抑制の結果では,背内側前頭皮質を抑制した場合に限り,学習によって獲得した報酬への期待行動が失われることがわかった. これらの結果は,これまで皮質下の脳領域では精力的に調べられてきた報酬に関する情報処理について,大脳皮質においては依然不明であった報酬とそれ以外の刺激や運動の神経表象について,一定の見解を与えるものであり,今後実施予定である『報酬と行動コストの脳内表現および情報処理機構』に迫る上で,基礎的な知見となると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物が行動決定する際に,行動の結果得られる報酬とそれに係る費用(コスト)がどのように脳内で処理されているかを明らかにすることが本課題の目的であるが,そのためにまず『大脳皮質における報酬の神経表象』を明らかにする必要があると考えた.そのために研究実績の概要において述べたように,『報酬そのもの』の情報がどのように大脳皮質において表現されているかを検討した.これらの結果については論文としてまとめ,プレプリントとして投稿したほか,査読付き雑誌への投稿も終えており,現在改定作業中である.
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の論文を早期に改定し,受理を目指す. 今回細胞ひとつひとつの活動を記録したのは課題を学習し終えた個体で行ったが,そのような細胞集団活動を得るに至る経緯を,二光子カルシウムイイメージングでは検討することができる.報酬の期待行動を学習するにあたって,その学習段階に応じて,動物自身の行動と神経細胞活動がどのように関連しているのかを明らかにすることを目指す. さらに,これまでは領域ごとの細胞体活動(出力)を観察していた.ひとつの神経細胞の出力活動の裏には,他の神経細胞からの入力を受け取る樹状突起での活動が影響していると考えられる.これまでに得られた知見をもとに,細胞体活動に先立って現れる樹状突起活動を記録し,それが細胞体活動を生じさせるのにどのような役割を担っているのか,検討する予定である.
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