研究課題
特別研究員奨励費
昨年度に完成した氷晶核計測のためのコールドプレート装置を用いて、北極陸域から分離・培養された細菌種の氷核活性の評価を継続して実施した。理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室から取り寄せた保管菌株のうち、液体培養で復元・継代培養できたノルウェー・スバールバル諸島陸域起源の2種について試験を実施した。フリーズドライと比較して、栄養細胞の氷核活性はわずかに高いことがわかった。また1種は芽胞形成細菌であったため、芽胞の氷核活性も計測した。芽胞の場合、さらに栄養細胞よりもわずかに高い氷核活性が計測された。しかしながら、今回観測された結果は最も氷核活性が強いと言われている細菌種と比べるといずれも氷晶核としてのはたらきが強いとはいえなかった。極域由来細菌の成長速度の低さを考慮すると、氷核活性微生物を探索するにはより長期間の探索が必要であることがわかった。新型コロナウイルスの問題により、遠方での現地調査は不可能となったため、近隣の大気環境から得られたDNAベースの大気中微生物群集に占める氷核活性を有する細菌群の存在割合の推定を試みた。既知の氷核活性細菌属の存在割合を合算すると、細菌群集全体のうち平均6.6%程度が氷核活性を持つ可能性があると推定された。この割合と、一般的に環境中に存在する細菌の90%以上は培養不能といわれていることを考慮すると、氷核活性微生物の探索にはDNAによる網羅的な検出と、ターゲットを絞った培養を組み合わせたアプローチを長期的に実施する必要があることが分かった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Atmospheric Environment
巻: 179 ページ: 201-221
10.1016/j.atmosenv.2018.02.026