研究実績の概要 |
今年度は,大域的にロバストな最適軌道設計手法への拡張に関する初期検討を行った.特に,惑星周回ミッションにおいて重要である惑星軌道投入に焦点を当てて,研究を遂行した.惑星軌道投入は,惑星探査ミッションにおいて,最もクリティカルなイベントの一つである.2010年に打ち上げられたあかつきミッション(JAXA)では,この惑星軌道投入に一度失敗しており,ミッション全体に大きな損失を与えてしまった.本研究では,このようなクリティカルなイベントに対してロバストな惑星軌道投入則の確立を目的とする.本研究の提案手法を用いると,万が一,惑星軌道投入に失敗してしまったとしても,比較的短時間に惑星と再会合することが可能となる.先行研究では自由帰還軌道を用いてロバスト性を高めていたのに対して,本研究では深宇宙軌道制御マヌーバを行うことを前提としたロバスト軌道投入則を提案した.このような拡張によって,より忠実度の高い確率的な不確定性モデルを扱うことが可能となり,先行研究よりロバストで最適性の高い軌道が実現された.また,本研究結果を,JAXAが検討している火星衛星探査計画MMXの火星軌道投入に適用して,提案手法の実用性を示した.本研究成果は,日本航空宇宙学会JSASSのInternational Symposium on Space Technology and Scienceにて発表を予定している.また,上記の研究とは別に,博士研究で確立したTube Stochastic Optimal Controlに関する論理体系をまとめ,当該分野で権威的であるAAS/AIAA Space Flight Mechanics Meetingで発表し,アメリカ航空宇宙学会AIAAのJournal of Guidance, Control, and Dynamicsへ投稿・査読中である.
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