研究課題
特別研究員奨励費
酸素発生型光合成生物は、2種類の光化学系(光化学系Iと光化学系II)に加え、種に特有の光捕集アンテナを持つことで利用可能な光の波長範囲を広げる。特にシアノバクテリア、紅藻、灰色藻は、フィコビリソームと呼ばれる光捕集アンテナを持つことで全可視光を光合成に利用できる。光合成における可視光の利用方法を解明することを目的として、令和元年度には、灰色藻Cyanophora paradoxaにおける短期的調節時の光捕集とエネルギー移動の調節機構を分光学的手法により検証した。標準光に対応する強度の青色LED照射細胞の蛍光スペクトルは暗順応細胞とほとんど変わらなかった。標準光に対応する強度の赤色LED照射細胞において、フィコビリソームから光化学系へのエネルギー移動は暗順応細胞とほとんど変わらなかったが、光化学系II内で誘導された消光により光化学系IIの蛍光強度のみ10%程度減少した。単色LEDの照射強度を増加させると、光化学系II内での消光の寄与がさらに10%程度増加した。灰色藻と色素組成が類似するシアノバクテリアや紅藻では、フィコビリソームから光化学系IIやIへの直接的なエネルギー移動、光化学系IIからIへのエネルギー移動、フィコビリソームの遊離、が短期的な調節機構として考えられてきた。したがって、本研究で得られた光化学系II内で誘導された消光は、短期的調節時の光エネルギー利用法の新たな知見である。長期的調節(平成30年度)と短期的調節(令和元年度)の結果から、光化学系II内から光捕集アンテナ内へ向かって順次駆動する多重調節機構により、両光化学系におけるエネルギー分配が維持されると考えられる。比較対象として使用したフィコビリソームを持たない珪藻Chaetoceros gracilisから新規光捕集アンテナを単離し、その光捕集アンテナが従来の光捕集アンテナと比較して長波長に吸収と蛍光ピークを示し、速い蛍光減衰を起こすことを明らかにした。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Photosynthesis Research
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