本研究は「特性調整部混合法の開拓による機能性大環状芳香族分子の設計合成」の題目のもと遂行された。交付申請時にも記載した通り、大環状芳香族分子の構造とその特性についての新しい発見を求めて、機能探索・機能開発を目的に行われた。 研究実施計画を元に研究は遂行された。具体的に、新たに特性調整部として大環状分子の周縁部に多様な置換基を導入した分子を設計し、設計した分子を合成する際にはホモカップリング反応やクロスカップリング反応を駆使することで、材料開発にも重要な大量合成が簡便にできることを明らかにした。大量に合成された化合物について、紫外可視吸収スペクトルや蛍光スペクトルを用いて光物性を分析し、熱重量測定等によって分子の安定性を評価することで有機発光デバイス材料として利用できることを見いだした。実際に、設計した分子を応用することによって、従来の分子設計指針では達成されていなかった、デバイス特性を開発することに成功した。 分子の設計からデバイス応用までの研究を一貫して行うことによって、優れた特性を有する分子を設計することができた。大環状芳香族分子の周縁部に多種多様な置換基を導入することで、求めた物性を付与することができ、そのデバイス特性を調整できることがわかった。 また、多様な分子を設計合成する中で、デバイス特性および薄膜中のマクロな特性から単分子固有の物性を見通すことによって、その分子構造とデバイス特性との関係性を解析してきた。 以上の研究実績は、今後さらなる発展が期待される大環状芳香族分子に関する研究の知見として有用であると考えている。
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