研究課題
特別研究員奨励費
本研究では,らせん状グラフェンナノリボン(GNR)分子をはじめとして,らせん性を持つ新奇湾曲π共役分子の合成および構造・物性の解析を行った.ジベンゾクリセン骨格に着目し、これを直鎖状に連結した長鎖らせん状GNR分子の合成を試みた.前駆体であるテトラアリールエチレン3-5量体の合成法を確立し,テトラアリールエチレン3量体の脱水素環化反応によるらせん状GNR分子の形成において,質量分析により目的分子の生成を確認した.種々の反応条件・精製方法や,置換基の変更等の分子設計の見直しを検討したが,過剰反応による低収率などの理由から目的分子の単離・構造決定には至らなかった.らせん状GNR分子の合成を検討する中で,構成単位であるジベンゾクリセンが湾曲したらせん構造を持つことに気づいた.これに着目し,ジベンゾクリセンをシクロアリーレンにおけるパネルとして筒状に連結し大環状化することで,カーボンナノチューブ(CNT)の部分構造となるらせん型有限長CNT分子を合成した.白金錯体経由カップリング反応による大環状化反応では,ジベンゾクリセンが湾曲した構造を持っていることで環化三量体を優先的に得られることを見出した.これにより,従来合成された有限長CNT分子よりも直径が縮小されたらせん型有限長CNT分子を得た.得られた環化ジベンゾクリセン三量体の4種のキラルなアトロプ異性体の単離・構造決定を行った.結晶構造解析により筒状の分子構造とパッキング構造を明らかにした.また,加熱による異性化実験からアトロプ異性体の熱安定性が非常に高いことを見出した.さらにキラル光学特性においてらせん型CNT分子として直径縮小による効果を観察し,その詳細について理論計算と合わせて解析・考察した.以上より,らせん性を持つ新奇湾曲π共役分子の合成・構造解析という目的に沿って構造化学の分野において重要な知見を得ることができた.
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 58 号: 22 ページ: 7385-7389
10.1002/anie.201902893