研究課題
特別研究員奨励費
本研究の独自性である「エピタキシャル薄膜成長」と「化学反応」という技術を駆使し,様々な材料系に着目し遷移金属酸化物の新しい物性の開拓・制御を試みた.本年度は,主に層状Li1-xNbO2という材料に注力し,新たな発見が得られた.昨年度の研究においてLi1-xNbO2という材料を再発見した.1990年ごろから超伝導体として知られていた本物質は,高品質なエピタキシャル薄膜として合成すると初のp型透明超伝導体となることが明らかとなった。しかしながらその理由は未だ不明であり,その解明が急務であった.そこで,今年度は以下の2点に着目し物性の解明と制御に取り組んだ.①[p型透明超伝導性の解明]電気測定と光学測定の結果を詳細に解析することで,強相関電子と孤立バンド構造がp型透明超伝導性を引き起こしていることが明らかになった。二次元NbO2層に閉じ込められた電子は強相関電子を創り出した.この有効質量が増大した電子は超伝導を引き起こすと共にプラズマエネルギーを低くし,赤外領域の透明性を向上させた。一方で,NbO6三角柱配位構造が孤立バンド構造を創り出した.これはp型導電性を実現すると共に余分なバンド吸収を抑え,紫外領域の透過率を向上させた.本物質ではこれら2つの効果が共存していることにより,p型透明超伝導性が実現していることが解明された.これらは物質探索の新たな指針も提供しており,物理的にも興味深い.②[p型透明超伝導特性の制御]Li1-xNbO2は層状構造を有しており,Li充放電反応に有利であると推測できる.作製に成功した薄膜を電極とした電気化学セルを作製し,更に電気伝導性を測定する4端子測定電極を追加したLiイオン電池+トランジスタの機能を持つデバイスを自作した.その結果,Liイオン充放電反応に伴い超伝導特性が可逆的かつ完全に制御することに成功した.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Materials
巻: 2 号: 11 ページ: 115003-115003
10.1103/physrevmaterials.2.115003
https://researchmap.jp/Takuto_Soma/
http://www.ohtomo.apc.titech.ac.jp/