研究実績の概要 |
総合性能でNafion®に替わる電解質膜の開発を目的として実施した。実施内容として、表面に2次元プロトン伝導経路を付与した機能性フィラーの作製を試み、これらを多点接触させ、3次元プロトン伝導チャンネルを構築し、より安価で大量生産可能な固体高分子電解質膜の設計・実証に取り組んだ。これまで、粒子共存制御ラジカル重合法を用いて、シリカナノ粒子表面にPAA-b-PS (polyacrylic acid-block-polystyrene)を被覆したコア-シェル型ハイブリッドナノ粒子の作製・評価を行い、目的のコア-シェル型ハイブリッドナノ粒子の作製に成功してきた。 より高温域での稼働とプロトン伝導度向上を目的として、高耐熱性と高プロトン伝導性の発現に着手した。Poly(1-vinylimidazole)とPolyvinylphosphonic acid (PVPA)を目的化合物として、精密ラジカル(RAFT)重合を行い、それぞれdithiocarbamates型とxanthate型でのRAFT重合が可能であることを見出した。特にPVPAの系では、これまで水系での重合が一般的であったが、RAFT試薬の構造を見直すことで、有機溶媒中でのRAFT重合を可能とした点で意義深い。 さらに、xanthates型RAFT試薬を用いて、粒子共存制御ラジカル重合法によりsilica@X1-PVPAを作製した。作製後、Imidazoleを吸着させ、PAA-b-PS を被覆したsilica@X1-PVPA/Im/PAA-b-PSの系では、最表面にブロッキング層が存在するにも関わらず、プロトン伝導性の著しい低下を抑制し、高プロトン伝導性(3.14×10-2 S/cm, 60℃, 98% RH)を発現した。また、180℃程度までの耐熱性が確認できている。以上、高プロトン伝導性の発現と耐熱性の向上を達成した。
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