研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、室内実験にて環境DNA検出系の確立と、環境DNAの放出量やその分解過程などの基礎情報の蓄積を行い、これらの成果をもとに、実際の調査航海にて環境DNA法がウナギ産卵地点探索技術として有用であるか否かを検討することを目的としている。本年度は、主に以下3つの実験を実施した。まず(1)極めて希薄な環境DNAを確実に種同定できる方法を検討した結果、ウラシルを合成できる大腸菌を用いたクローニング法を行うことにより、水槽水の環境DNA抽出物の1000倍希釈溶液からでさえ、ニホンウナギの塩基配列を取得できた。また、本法を外洋水に適用した結果、微量な環境DNAがニホンウナギであると種同定できた。本法の確立は、定量PCRにおいて陽性と判断された環境DNAサンプルの誤同定を避け、偽陽性のリスク減少を可能にした。次に(2)人為催熟したニホンウナギ親魚を水槽に収容して産卵行動を誘起し、その水槽水を17:00から7:00まで2時間毎に採水した。同時に、水槽中の卵の有無を確認した。得られた水試料を分析した結果、3:00以降に大量のミトコンドリア環境DNA量が検出された。卵は、5:00と7:00に水槽から得られた。さらに(3)2017年に実施された産卵場調査航海にて採水した水試料の追加実験を行った。その結果、新月6日前に2地点の水深400mと600mから微量な環境DNAを検出できた。さらに、ニホンウナギの産卵ピークである新月3日前に、1地点の水深400mから相対的に高濃度のニホンウナギ環境DNAを検出できた。高濃度の環境DNA検出から、新月3日前にニホンウナギの産卵行動が生じたものと推測された。以上より、本研究は、外洋において魚類の産卵生態に環境DNA法を適用し、さらに本法がウナギ産卵地点探索技術として有用であることを示した初の事例となった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
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