研究課題
特別研究員奨励費
受精卵の極性化を制御する実働因子の同定を目指し、受精卵のトランスクリプトーム解析を行った。本年度はまず、受精卵を胚珠から単離・回収するための手法の開発に取り組んだ。はじめに、発生後期の胚の単離法などを参考に、実体顕微鏡下で胚珠を解剖して受精卵を単離することを試みた。しかしながら、この方法では胚珠の切断場所などを検討しても、受精卵を遊離させることができなかった。そこで、当研究室の先行研究で実施された卵細胞の単離の方法を参考にして、胚珠を細胞壁分解酵素で処理することで、受精卵をプロトプラスト化して遊離させることを目指した。しかしながら、酵素処理のみでは受精卵は遊離しなかったため、さらに胚珠を物理的に破砕する操作を加えた。様々な条件検討の末、受精卵を遊離させることに成功した。次に、上記の方法で野生型の受精卵を30個回収して、市販のキットを用いてmRNAを抽出してからcDNAを合成・増幅し、中部大学の鈴木孝征博士との共同研究として、次世代シーケンサーによるRNA-seqを行った。しかし、1サンプルあたり1000万リードを見込んでシークエンシングしたにもかかわらず、30個の受精卵からはおよそ10万リードしか検出できず、遺伝子発現を解析するには不十分であった。そこで、回収する受精卵の個数を増やし、さらにライブラリー濃縮のためのPCRのサイクル数も変更したことで、十分な量のリード数を検出できるようになった。以上の検討によって、受精卵の遺伝子発現を精確に解析するためのサンプル調整方法が確立できたと考えられた。そこで、この方法で得られたトランスクリプトームデータの信頼性を確かめるために、卵細胞のトランスクリプトームデータと比較した。その結果、受精卵では卵細胞と比べて、6000以上の遺伝子が特異的に発現していることがわかった。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 116 号: 6 ページ: 2338-2343
10.1073/pnas.1814160116